土曜日
3032007

和の伝道者その11

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CALTY DESIGN RESEARCH, INC
カラーデザイナー/デザインストレタジスト
佐野慎さん

生きていると誰かに「勇気を貰う」という経験をする。

子供の頃、夕暮れ時に一人家に帰ろうと田舎の一本道を歩いていたら、田園風景には不釣合いの赤いスポーツカーが砂埃を巻き上げて通り過ぎていった。

田んぼには、穂をつけ始めた稲が自分の胸の高さに広がっており、夕日に照らされて黄金に輝く世界を疾走する赤い塊に目を奪われた僕は、見えなくなるまで立ち尽くしながら無性にワクワクしていた。

「SCシリーズは、レクサスのラインナップの中でもひときわ輝く宝石、『 The Jewel of LEXUS 』をコンセプトに、色のコーディネートをしました」と米国での正式名称、「 LEXUS SC430 」のカラーデザインを担当した佐野さんは当時を振り返る。

SCはスポーツクーペの略。その中に、米国では「 ABSOLUTELY RED 」と呼ばれ、昨年の8月まで販売されていたソリッドの赤い「宝石」が輝いていた。いわゆる、「真っ赤なスポーツカー」だ。

レクサスは言わずと知れたトヨタが誇る高級車。だから高級感の漂う色が相応しい。比べて赤は、高級車に使われることの希な色。下地を隠す力が弱く、鮮やかな色が出しにくい。それでも、「キラリと輝く赤のSCを加えたい」と諦めず、特別な白い中塗りの上に、赤い中塗りを重ね、その上から赤とクリアを塗って課題を乗り越えた。

無論、こだわったのは外装だけじゃない。オープンカーは内装の色も人目につきやすい。外の赤に、中の白でコントラストを出した。

佐野さん自身、幼い頃はスパーカーに憧れた。今は自分が憧れや夢の対象をつくっている。「真っ赤なSCは、自分が欲しいと思える車です」とはっきり語る。

望んだように生きるのが疲れる現代社会で、カッコいいことをするには勇気がいる。もしかしたら、真っ赤なスポーツカーに乗るのも勇気がいるかもしれない。

レクサスは西海岸でよく売れる。「カリフォルニアの高い太陽の下で映える赤」だから。

その一言に釣られた僕は、友人の結婚式を利用して、ロサンゼルスからサンフランシスコまで海岸沿いを車で走ってみようと、この原稿を大陸を横断する飛行機の中で書いている。真っ赤なレクサスに、北上する一号線ですれ違ってみたくなったのだ。

今も昔も、真っ赤なスポーツカーは、そういう戯言に真剣になれる人のための一台。すれ違うだけで勇気が湧いてくる。