土曜日
4212007

矢野顕子×アスパラガス

矢野顕子が現在もっとも音楽に没頭できる場所、
それがプライベートスタジオ・パンプキン。
マンハッタンの喧騒を離れた小さな田舎町の
優しさの香る「秘密基地」で、
デビュー30周年を迎えたアッコちゃんの世界を紡ぎました。


こっちからの続きです。

矢野顕子×アスパラガス

ねたの見えるカウンター席で隣に座ったのは
矢野が「Japanese Girl」でデビューした頃に
オギャーと産声をあげた矢野の友人。

そんな彼がマグロの握りを頬張りながら
こんな話をしてくれた。
ある時、矢野のライブであまりにも感動してしまった友人君は
ねぎらいと感謝の気持ちが上手く言葉にならず、
「うまいっすね」と
矢野を褒めてしまった。

コラコラ。路上で歌う若者に声をかけるんじゃないんだからって
デビュー30周年の矢野顕子ですよって
僕みたいな気の小さい三流ライターは思っちゃう。
しかしそんな言葉に矢野は
「そうかなぁ。これで食っていけっかなぁ俺」と
優しい冗談で答えてくれたそうだ。

わさびがピリッときいた江戸前の味みたいな
矢野らしい、とっても暖かいお話。

「あれ以来そのかけいあいが楽しみで
ライブに行っちゃうんだよね」
と友人君は笑っている。

国宝級の腕を持つ寿司屋の板前と化した矢野顕子が、
旬の「気持ち」を聴き手の好みに合わせて調理し
そっと腕を伸ばして客の目の前に出してくれる。
その距離のなんと近いこと。
ライブはまさに矢野ワールドの真骨頂。

「CDは一番いい旬の時に刈り取ったアスパラガスを
急速冷凍したみたいな感じ。
上手に解凍してくれればいつでも美味しく食べれるもの。
でも、生のアスパラガスのそれも取れ立てのものって
もう本当にビックリしちゃうくらい美味しいのよね。
何もつけないでそのままパリパリ食べれちゃう。
そういうものはその日しか食べれないかもしれないし、
二度と食べれないかもしれない。
だから一生心に残るのよね。それがライブの魅力」

(敬称略)

つづく