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<!--Generated by Squarespace Site Server v5.11.5 (http://www.squarespace.com/) on Fri, 30 Jul 2010 18:30:43 GMT--><rdf:RDF xmlns:rdf="http://www.w3.org/1999/02/22-rdf-syntax-ns#" xmlns:rss="http://purl.org/rss/1.0/" xmlns:dc="http://purl.org/dc/elements/1.1/" xmlns:sy="http://purl.org/rss/1.0/modules/syndication/" xmlns:admin="http://webns.net/mvcb/" xmlns:content="http://purl.org/rss/1.0/modules/content/" xmlns:cc="http://web.resource.org/cc/"><rss:channel rdf:about="http://www.creative-platform.com/oneemaster1/"><rss:title>オネエとマスター</rss:title><rss:link>http://www.creative-platform.com/oneemaster1/</rss:link><rss:description></rss:description><dc:language>ja-JP</dc:language><dc:date>2010-07-30T18:30:43Z</dc:date><admin:generatorAgent rdf:resource="http://www.squarespace.com/">Squarespace Site Server v5.11.5 (http://www.squarespace.com/)</admin:generatorAgent><rss:items><rdf:Seq><rdf:li rdf:resource="http://www.creative-platform.com/oneemaster1/2008/4/4/035966022609.html"/><rdf:li rdf:resource="http://www.creative-platform.com/oneemaster1/2008/4/4/q.html"/><rdf:li rdf:resource="http://www.creative-platform.com/oneemaster1/2008/3/22/590034294392.html"/><rdf:li rdf:resource="http://www.creative-platform.com/oneemaster1/2007/9/2/795893239409.html"/><rdf:li rdf:resource="http://www.creative-platform.com/oneemaster1/2007/8/21/995655251167.html"/><rdf:li rdf:resource="http://www.creative-platform.com/oneemaster1/2007/6/19/585882746885.html"/><rdf:li rdf:resource="http://www.creative-platform.com/oneemaster1/2007/6/9/338578251373.html"/><rdf:li rdf:resource="http://www.creative-platform.com/oneemaster1/2007/6/6/418980020498.html"/><rdf:li rdf:resource="http://www.creative-platform.com/oneemaster1/2007/5/14/418980020498.html"/><rdf:li rdf:resource="http://www.creative-platform.com/oneemaster1/2007/5/10/665646089464.html"/></rdf:Seq></rss:items></rss:channel><rss:item rdf:about="http://www.creative-platform.com/oneemaster1/2008/4/4/035966022609.html"><rss:title>真っ赤な郵便ポストを探せ！</rss:title><rss:link>http://www.creative-platform.com/oneemaster1/2008/4/4/035966022609.html</rss:link><dc:creator>佐藤寛孝</dc:creator><dc:date>2008-04-04T14:38:44Z</dc:date><dc:subject></dc:subject><content:encoded><![CDATA[<p>私はね、マスター、<br />最近こんなふうに思うわけ。<br /><br />経験って、自分が本当に手に入れたいと願っていたものを<br />手に入れられなかった時に手にするものなんだなぁって。<br /><br />マスター、私はもうつくづくそう思うわけ。<br />ねぇマスター。聞いてる？<br /><br />何で突然こんな話をするかっていうとね、<br />私こないだ久々に夢を見たの。<br /><br />夢を見たぐらいでって思われちゃうかもしれないけど、<br />私、夜の仕事を始めてからとんと夢なんか見なくなっちゃったの。<br />お店閉めて、もろもろの片づけをして<br />マンションに帰れるのが朝の四時か五時でしょ。<br />こうやって時々マスターの顔を見て<br />話を聞いてもらってからなんてなると<br />家の近くで登校途中の小学生の集団に遭遇するわ。<br /><br />だからね、夢を見なくなったことに関してもどこかで思ってたのね。<br />あぁ、夢って夜の暗い世界で見るもんなんだなぁ～って。<br /><br />ところが、先日見た夢はちゃんとお昼にやってきちゃったのよ。<br />それもあってちょっと驚いちゃって。<br />夢の中でも、目覚めてからもね。<br /><br />その夢がどういう始まりかたで、<br />どういう終わりかたをしたかはおぼろげなんだけど。<br />夢の中でね、<br />私が郵便受けに郵便を取りに行くのね。<br />フンフンフンって鼻歌まじりで。<br />きっとなにかいいことがあったのね。<br /><br />そしたら、赤くて小さな郵便受けがあって<br />そのの中には私がこれまでに書いた手紙が全部<br />出したはずの相手に届かないで戻ってきてしまって<br />今にも溢れんばかりってことになっているのよ。<br />小学校の頃に書いて、<br />結局出せずじまいだったラブレターとかまで<br />どういうわけかもどってきちゃってるのよ。<br />出してないのに。<br /><br />私のこころがね、そこで止まる音がするのね。<br />そのせつない音がアラームになって私は目を覚ましたの。<br />太陽がカーテンとカーテンの隙間から私を狙っていたわ。<br /><br />ねぇマスター。<br /><br />あの戻ってきてしまった手紙たちって<br />私の夢の残骸だった気がしてしかたがないのよね。<br />叶わなかった夢とか希望とか<br />報われなかった努力とか涙とか。<br />それが私の心の郵便受けにいっぱいになってるのね。<br /><br />「世間じゃそれを経験って呼ぶ・・・ですか？お客さん？」<br /><br />クラブのママ風情がちょっと感傷的になりすぎかしら？</p>
<p>「お客さん。こんな話をしってますか？<br />お客さんのお話をうかがっていたら、<br />懐かしい、夜の街に伝わる伝説の話を思い出してしまいました。<br />そいつが本当かどうかは誰も知りません。<br />所詮、夜にはえるネオンの灯に魅せられて集まる連中にとっては<br />真実かどうかなんていうことは大した意味も持ちはしませんからね。<br /><br />聞いた話じゃ、この街のどこかには、<br />古臭い寸胴形の真っ赤な郵便ポストが<br />いまだにたった一つだけ存在しているらしいのです。<br />そのポストには、誰が彫ったのか、<br />「シャー専用」と刻まれているらしいんですね。<br />えぇ、あの伝説の赤い彗星、シャアです。<br /><br />でね、なんでも噂じゃぁ、ある勇気のある男が<br />試しにそのシャア専用ポストに手紙を投函したそうなんです。<br />まったく怖いもの知らずの奴がいたもんですよ。シャー専用ですよ！<br /><br />どうなったかというと、<br />その男の出した手紙がね、<br />なんでも、<br />普段の三倍のスピードで相手に届いたらしいんです。<br />お客さん、怖いでしょう？<br /><br />それでね、夜の世界じゃ畏敬の念を込めて<br />その赤いポストをシャア専用ポストって呼ぶようになったらしんです。」</p>
]]></content:encoded></rss:item><rss:item rdf:about="http://www.creative-platform.com/oneemaster1/2008/4/4/q.html"><rss:title>飛び出したチョロQには届かなかった壁すらも吹き飛ばしてしまうエネルギーがあると言っても言い過ぎということはないはずなのだ。</rss:title><rss:link>http://www.creative-platform.com/oneemaster1/2008/4/4/q.html</rss:link><dc:creator>佐藤寛孝</dc:creator><dc:date>2008-04-04T12:46:05Z</dc:date><dc:subject></dc:subject><content:encoded><![CDATA[<p>私はね、マスター、<br />最近こんなふうに思うわけ。<br /><br />時として私たちの前に高くそびえて行く手を邪魔する壁というのは<br />私たちが壁のその先にあるものを<br />どれだけ真剣に欲しているかを照明するために存在するんだって。<br /><br />マスター、私はもうつくづくそう思うわけ。<br />ねぇマスター。聞いてる？<br /><br />私たちの身の回りで私たちの人生を支えてくれている<br />多種多様な物たちには、<br />そこに存在する理由みたいなものが<br />おぼろげながらもあるはずなのよね。</p><p>わたしの父は建築家で、彼は大きなビルや住居を描いてきたのよ。<br />そこには具体的だったり非具体的だったりしても<br />ちょんと使う人や使われる目的みたいなものがあって、<br />だからこそそこに価値も生じるわけなのよね。<br />そういうシステムみたいなものが、<br />どうやらこの社会には通念としてずいぶんと前から構築されているらしくて、<br />お陰で父は月末になると<br />家族五人が食べているだけの稼ぎをもって帰ってくることができたわけでしょ。<br />私がひもじい思いをせずにすくすくと成長することができたのも、<br />考えようによっては全てのものに存在価値があるっていう、<br />そんな抽象的な事実のお陰なのよね。<br /><br />二年位前の冬のことなんだけど。<br />いえ、本当はもっと具体的に覚えているの。<br />あれは十二月のクリスマス商戦真っ只中のとある金曜の夜だった。<br />その夜、わたしは銀座のとある高級ブランドのお店で、<br />一組のカシミヤの手袋を買ったのよ。<br />当時の私はまだ築地でＯＬをしていたから、<br />それはなかなか贅沢な買い物だったの。<br /><br />何を隠そう、私は基本的に手袋というものをしないですむのなら、<br />できればしないですませたい側の人間なのね。<br />カシミヤの手袋を購入する以前に持っていた手袋といったら<br />社員旅行で一度だけ行ったスキー旅行の時に買った<br />一組だけというありさまだったくらい。<br />だからその日だって、別にふらっと時間つぶしのために立ち寄ったお店で、<br />手袋を買う予定などまったくなかったのよ。<br />それなに、私、<br />お店に入って左のショーケースの下に<br />さりげなく並べられていた濃い茶色の手袋に出会って手に取った瞬間、<br />それを買うことに決めていたわけなの。<br /><br />迷いなしって感じに。</p><p>つまり、なにが言いたいかというとね<br />私がその日、カシミヤの手袋を買ったのには、<br />具体的な一つの理由があったからである、ということ。<br /><br />それはというのは、最高に肌触りの良いその手袋をつけて、<br />いつか、大好きなあの人の手を握りたいと思ったのね。<br />そしたら、寒さにかじかんでいた彼を<br />すこしはハッピーにできるんじゃないかなって、<br />結構真剣に思っちゃったのよ。<br /><br />本当に、たったそれだけの酔狂な理由なの。<br />あえて値段は言わないけどね、高かったのよ。（笑）<br /><br />しかも、結局、偉そうな理由で買った手袋は<br />当初の目的を果てせずじまいで。<br />そろそろカシミヤの生地が伸び始めてきているし。<br /><br />そんな手袋君を前にすると、<br />正直あまり自信をもって言えることではないのだけれどね。<br />それでも私は、ロマンとか夢とかいったものが、<br />なんというかこうスケールの大きななにかでなければいけないとは<br />どうしても思えないのよね。<br /><br />少なくとも、あの手袋には、確かな存在理由があって、<br />そこにわたしは小さいけれども確かなロマンを感じ夢をみていたわけで。<br />っていうか、気がつくと、過去形の話になってない？<br /><br />ねぇマスター、私の話聞いてくれてた？<br /><br /><br />「お客さん。ちゃんと聞いてましたよ。手袋の話。」</p><p>「私はねお客さん。しがないバーの雇われマスターです。<br />付け髭をして今夜もこうやってたいして美味しくもないカクテルを作っているだけの男です。<br />巨人ファンの前では巨人ファンに<br />プロレス派の前では猪木イズムの継承を語りしながら、<br />そうやってスポーツも政治も恋沙汰も、<br />自我をすてただただ相手の話に合わせるのが仕事の<br />なんとも情けない男です。<br /><br />でもね、こんな私でもね、<br />これだけは自信を持って言えるってことがあるんです。<br />お客さんはチョロQ理論って奴をご存知ですか？<br /><br />子供の頃に遊んだチョロQっていうネジ巻き式の走る車のおもちゃ。<br />覚えてますか？<br />後ろにいったん引いてから、ぱっと手を離すと<br />撒かれネジの反動で勢いよく走るっていう<br />単純な仕組みですよ、あれは。<br /><br />人と人との関係もねお客さん、<br />きっと、ちょっと後ろに下がってしまうようなことも必要なんじゃないですかね？<br />下がった分だけ、相手を想う気持ちが強くなるんですよ。<br /><br />お客さん。私はそう信じてるんです。<br /><br />でね。<br />私ら飲み屋の世界には、<br />味噌をつけて食べればなんでも美味いっていう、<br />もろきゅう理論っていうがあります。<br />双璧です。えぇ。<br /><br />このもろきゅう、あちらの席のお客さんからです。</p>
]]></content:encoded></rss:item><rss:item rdf:about="http://www.creative-platform.com/oneemaster1/2008/3/22/590034294392.html"><rss:title>ねえマスター。私こないだ墓穴をほったの。</rss:title><rss:link>http://www.creative-platform.com/oneemaster1/2008/3/22/590034294392.html</rss:link><dc:creator>佐藤寛孝</dc:creator><dc:date>2008-03-22T17:24:34Z</dc:date><dc:subject></dc:subject><content:encoded><![CDATA[<p>ストレスを大きなスーツケースいっぱいに詰め込んで<br /> 愛しきチャンチョの待つ日本へと発って行ったダイスケが<br /> わが家に残していったマックからの書き込み。<br /> <br /> なんか他人のふんどしで相撲とっているみたいで<br /> （ふんどしなんかまいたことなんかないいけどね）<br /> とにかくとっても落ち着かないけど楽しいわ。（&larr;カナの真似）<br /> <br /> 今夜はダイスケのストレスつながりで、<br /> 私が以前お犬の雑誌のお仕事でインタビューをした時に<br /> 聞いた話をシェアするわね。（&larr;再度、カナの真似）<br /> <br />ちょっと口調がオカマっぽいけど気にしないでちょうだい。<br />満月のきれいな今夜ははなんだかそんな気分なの。<br /><br /><br /> ラブラドールとかジャーマンシェパードなんかが活躍する<br /> 救助犬の世界のお話なんですわ。<br /> この種類の子たちって、<br />本当に人間のことが大好きなブリードなんですってね。知ってました？<br />とにかく一夏の恋、じゃなかった、人懐っこいのよね。もう本当に。<br /> だからこそ災害救助の現場でね瓦礫や雪崩に埋もれた人間を探せるんですって。<br /> <br /> でもこれがあだになることもあるんだよって聞いたことがあるの。<br /> たとえば9.11の時のように、<br /> ほとんど生存者がいない状況で過酷な活動に長時間従事すると<br /> 大好きな人間を見つけられないストレスで<br /> 救助犬が英語で言うディプレスな状態に、<br /> つまりおちこんじゃうって状況なんでしょうけど<br />そういうことになっちゃうんですって。<br /> でね、やがてはそれ以上働くことを拒否するようになるのね。<br /> <br />とあるまっちょな消防士さんのお話ではね、<br /> 苦労してようやく発見した時には<br /> もうすでに遺体になっていた被害者の方がおられたのね。<br /> そしたらね、発見した救助犬が<br />その方のほほとかおでことか鼻先とかくちびるとかをね<br /> 一生懸命ぺろぺろと舐めるんですって。<br /> マッチョの消防士さんは、<br /> 「ごめんね」って何度も言っているんだって分かったって。<br /> それから、その子はそれ以上救助活動をするのを<br /> かたくなに拒絶したそうなの。<br /> <br /> ストレスってすごいわよね。<br /> <br /> でね、じゃそんなふうに<br /> 落ち込んでしまった救助犬をどうやって<br /> 励まして元気づけるのか？想像つく？<br /> <br /> またまたまっちょの消防士さんが教えてくれた話よ。<br />なんでもそういう時は、災害現場に穴をほって<br /> そこに生きている消防士さんを一人埋めちゃうんですって。<br />でね、それを落ち込み中のワンちゃんに見つけさせるのね。<br /> もうその時の、一夏の恋、じゃなかったわね、人懐っこい犬たちが<br /> 大喜びする光景は忘れられないって仰ってたわ。<br /><br />これ冗談みたいだけど、全部本当のお話よ。<br />私がお仕事でインタビューをしてうかがったお話の中でも<br />一番か二番目くらいにお気に入りにしているお話なの。<br />満月の今夜だから喋っちゃったわ。<br /><br />そういえば私先日、<br />パラグアイでお墓の穴をシャベルで掘ったことがあったわ。<br />あれってすごい経験よね。<br /><br />人の遺体を葬るために、深くて暗い穴を生きている人間たちが<br />汗かきながら掘って行くのよ。<br />いつからか、葬儀屋さんがどの町にもいるようになって、<br />家族や友人が遺体を葬ることをしなくなったのか知らないけど<br />あれは本当は故人を心からしのぶ人たちがするべき仕事なのよね。<br />そう学んだの。<br /><br />だって、生と死の明確な境ってのがあるとしたら<br />生きている人間がそれを実感するのに<br />墓穴堀以上の経験はないと私は思うんですもの。<br />しばしの別れの言葉をシャベルやつるはしにたくすのよ。<br />そうやって本当にあの人は死んだんだなって体でわかるの。<br /><br />あらやだ、なんでこんな話をしてるのかしら。<br />本当はほら、イライラが溢れ出してとまらない鼻血の<br />ようになっているダイスケに、<br />穴でも掘って何か大切なもんでも埋めてみたらと<br />言いたかっただけなのに。うふ。<br /></p>
]]></content:encoded></rss:item><rss:item rdf:about="http://www.creative-platform.com/oneemaster1/2007/9/2/795893239409.html"><rss:title>サボテンは今日も・・・</rss:title><rss:link>http://www.creative-platform.com/oneemaster1/2007/9/2/795893239409.html</rss:link><dc:creator>佐藤寛孝</dc:creator><dc:date>2007-09-02T16:34:11Z</dc:date><dc:subject></dc:subject><content:encoded><![CDATA[<p>これは今の家に引っ越してくるずっと前の話です。 <br /><br />私はもともと北関東の小さな町の出身なんですが <br />大学入学を機に東京に出まして、 <br />そのまま就職、結婚、子育てと <br />一度も地元に帰ることはありませんでした。 <br /><br />そんな私の父もまた<br />もともとは九州の生まれだったのですが、<br />東京に就職のために出て来て <br />そのまま関東近郊を転勤で渡り歩いていましたから、 <br />私の中で大人というものは<br />どこかで生まれ育った町を出て暮らすものだ <br />という思いがあったのかもしれません。 <br />そんな父のほうはだいぶ前に亡くなってしまいましたが、 <br />健在の母は私の故郷を離れ <br />長野の方で姉夫婦と一緒に暮らしています。 <br /><br />そんなわけですから、 <br />大学を出る直前に仕事を選ぶ時も <br />私はどこかで転勤の多い業種を意識的に探していました。 <br />ただ、私が、航空交通管制官というもになったのは <br />本当に偶然でした。 <br /><br />当時私が暮らしていた学生寮には<br />お世話になっていた寮長さんがおられて、 <br />その方の年の離れた弟さんが、 <br />確か学生だった私たちとはあまり変わらない <br />年齢だったと思うのですが、 <br />その方がちょくちょく私たちの寮に <br />遊びこられていたんです。 <br />そん方は気さくな性格なうえに<br />齢も近かったこともあって、 <br />寮生たちともかなり仲良くなっていました。 <br />私なんかもお会いすれば <br />ご飯をご馳走していただいたりして。 <br /><br />で、その方が、偶然といいますか、 <br />航空自衛隊の自衛官だったんですね。 <br />しかも、今でいうパイロット候補生って奴です。<br /><br />当時の平凡な学生にとって、 <br />安保闘争はとっくに過去のことでしたし <br />全共闘も、はっきりとはしないのですが、 <br />どうやら敗北続きらしいっといった感じで <br />どこかむなしい。 <br />なんというか大学には言葉では言い表せない <br />重たい空気が漂っていました。<br />学校の一部にはそれでもバリケードが残っていて <br />相手もみえずに戦っている学生がいるわけです。 <br /><br />でも、再開した講義には就職を意識して <br />卒業のために単位をとろうとしている学生も少なくない。 <br />そして、私は、自分がどうしたいのかも <br />分からずに、ただ日々を過ごしているわけです。 <br />ただ、どうも勉強をする気分にはなりにくかったんですね。 <br />一流企業へ就職するために<br />露骨に闘争から身を引いていたと思われたくなくて<br />民間企業への就職は避けようと思いました。<br />ですから、自衛官というのは<br />なんというか<br />面白い選択肢かなぁってね。<br /><br />しかも自衛官というのは、 <br />社会的にはまだまだ日陰者の時代です。 <br />まぁ、いまでも、任務の厳しさから考えれば<br />社会的地位は低すぎるくらいなんでしょうけど・・・。 <br />それでも、さすがに今じゃ、<br />自衛官募集で学校や一般家庭に自衛官がうかがうと <br />露骨に嫌な扱いを受けたりはしないでしょ。 <br />昔は、対面上、最低必要人員を集めなきゃいけないんですが <br />それが大変だったので、 <br />さらに必死になって勧誘活動をすることになる。 <br />そういう悪循環が、どうも自衛隊、そして個々の自衛官の <br />イメージを暗くしてしまっていたんでしょう。 <br /><br />しかし、私が学生時代にお会いした <br />その自衛官の方には、 <br />ちっとも暗さのようなものがない。 <br />難しい主義や理想をおおびらに述べることもないし、 <br />苦労をひけらかすことも、 <br />防大卒の方に多い <br />屈折したエリート意識みたいなものもない。 <br />男としても人としても<br />とても気持ちのいい好人物で、 <br />私はその方と特別親しかったわけではないのですが、 <br />好意以上の、憧れににたものを<br />抱いていたのかもしれません。 <br /><br />卒業前の鬱憤とした気持ちの中で、 <br />空を職場にすることへの憧れを抱いたとすれば <br />それは間違いなく、その方からの影響のためです。 <br />唯一、自衛隊に行かずに <br />管制官の道を選んだのは、 <br />当時の私にはすでに結婚を考えている恋人がいて<br />その女性のご親族に<br />仏教系某政治団体の幹部の方がいまして、<br />まぁ自衛隊に入ったら<br />いろいろめんどくさいことになるだろうなぁと<br />そんなふうに思いまして、<br />自衛官は避けて航空管制官の道を選んだんです。<br /><br /><br />航空管制官採用試験をパスして<br />半年ほどは羽田の近くにある<br />航空保安大学で研修を受けました。<br />連日厳しい訓練が続きましたが、<br />寮生活は大学時代からで慣れていましたし、<br />忙しいとはいえ恋人に会うこともできました。<br /><br />ご存知のとおり、 <br />管制官という職業は日本では国家公務員扱いです。 <br />そのため、数年おきに転勤辞令がおります。 <br />おかげで独身時代から数えると <br />およそ１０回ほどの引越しをしました。 <br />結局今、定住の地に選んだのも <br />若い頃に管制官としての訓練を積んだ <br />この福岡の街です。 <br /><br />で、その福岡管理センターへの最初の転勤で<br />学生時代から付き合っていた恋人との<br />長距離恋愛がはじまりました。<br />彼女は大学の一学年後輩で<br />卒業までもう一年ありましたし、<br />本人も両親も卒業を望んでいました。<br />それで、彼女は東京、<br />私は福岡で一年、<br />それから結婚を考えることにしたわけです。<br /><br />ただ、管制官一年目のぺいぺいとはいえ<br />職業柄、出張で羽田に飛ぶことも少なくありませんでしたし<br />私用での飛行機移動に関しても優遇されていました。<br />土曜に東京へ飛んで、<br />日曜の最終で福岡に戻ることもありました。<br />JRがシンデレラエクスプレスなんてキャンペーンをはるずいぶん前に<br />こっちは空のシンデレラ気分です。（笑）<br />贅沢な恋でした。<br /><br />で、当時、彼女の実家は麻布にありました。<br />住宅街に、大きくはないのですが、<br />洋式のすてきな一軒家で、<br />僕としてもなんか実家に帰ってくるような気がしていました。<br />仲の良い家族で、<br />気持ちのいい彼らの暖かさが<br />家の隅々にも溢れているというか、<br />私にとっても大切な場所だったと思います。<br /><br />私の恋人はフランス文学を専攻していて、<br />カナダ人の先生からフランス語を教わっていました。<br />で、彼女の家の玄関には<br />そのカナダ人のフランス語教師が、<br />分けてくれた小さなサボテンが<br />鉢にいれられかざられていました。<br />私は植物にそれほど関心があるほうではないのですが<br />なぜかそのサボテンだけは好きというか、<br />気になってしまって、<br />恋人の実家を訪れるたびに<br />サボテンを意識していたのでしょう。<br />ある時、彼女が、福岡へ一緒にもって帰るようにと<br />小さなボーリングバッグに入れて持たせてきました。<br />「忙しくてちょっと水をあげ忘れても<br />枯れることはないから」、<br />私でも面倒をみれると言いたかったのでしょう。<br />深く考えもせず、預かることにしました。<br /><br />ただ、羽田の荷物検査で若いの警備官に<br />「サボテンは凶器になりえます」と言われた時には、<br />さすがにもらって来なかったほうがよかったかなぁと<br />思いましたがね。（笑）<br /><br />でもまぁ、<br />結局その女性とはそれから数ヶ月もせずに<br />別れることになってしまったんです。<br /><br />理由ですか？<br />なんだったんでしょうかねぇ。<br />今でもよく分からない部分が大きいし<br />分からない方がいいかなぁと思ってもいるのですが。<br /><br />ただ、一度嫁いで、最近戻ってきてしまった末の娘がね、<br />いつだったか、酒の席でですけどね、<br />「お父さんがその人と別れたのは<br />お父さんがサボテンを枯らしてしまったからだと思うわ」<br />なんてことを言うんですね。<br />どうなんでしょうねぇ？<br />そんなもんなんでしょうかねぇ。<br /><br />ただ、長いこと私は、<br />東京で私と離れてみて、<br />彼女が、<br />私がいかにつまらない男かに気づいたからなんじゃないかって、<br />そんなふうにね、<br />漠然とですが考えていたんで、<br />娘とはいえ、<br />まっすぐな眼で<br />女性からそんなことを言われたら動揺はしてしまいますよ・・・。（笑）<br /><br />しかし、人生なって不思議なものですね。<br />彼女と別れてしまったわけですから、<br />自衛隊に入隊しなおしてパイロットへの可能性もありましたし、<br />民間航空会社にパイロット候補生として<br />挑戦することもできたはずなんです。<br />でもね、私は結局、退官まで38年間を管制官で生きました。<br /><br />そして、今はこの福岡の街で、<br />出戻りの娘が昼間預けていく孫とサボテンの世話をしているわけです。<br /><br />サボテンは水をあげ忘れても枯れないと<br />ずいぶんと昔、<br />幼いながらも必死に愛した女性に言われました。<br />あれは、彼女の優しさであったし、<br />なんらかのSOSだったのかもしれません。<br />今となっては、それもわかりませんが・・・。<br />ただ、確かなことは、<br />あの時の私は、<br />枯れないはずのサボテンに<br />水をあげ過ぎて枯らしてしまったんです。<br /><br />そんなふうにダメにしたサボテンを<br />「枯らした」というべきかは自信がありませんが。</p>
]]></content:encoded></rss:item><rss:item rdf:about="http://www.creative-platform.com/oneemaster1/2007/8/21/995655251167.html"><rss:title>わたしがきみであなたはしろみ</rss:title><rss:link>http://www.creative-platform.com/oneemaster1/2007/8/21/995655251167.html</rss:link><dc:creator>佐藤寛孝</dc:creator><dc:date>2007-08-20T17:14:48Z</dc:date><dc:subject></dc:subject><content:encoded><![CDATA[<p>これは、某民放系ネットワークの地方放送局の<br />人気情報番組「今日もいい気分」の<br />担当アシスタントディレクターが、<br />当時県内で密かな話題を呼んでいたカリスマ女将、<br />佐伯南氏（さえきみなみ）が<br />中部地方の某NGO主催で開かれた講演会で行った<br />「幸せな玉子料理」という話を取材した際の、<br />取材ノートから抜粋した講演を<br />佐伯氏の了承を得て公開するものです。<br /><br /><br /><br /><br />「どうも皆さん。ただいまご紹介に預かりました、<br />森水庵の佐伯南でございます。<br />本日は、どうぞよろしくお願いいたします。<br /><br />えぇ、今日は、『幸せな玉子料理』という主題でですね、<br />少しの時間、<br />お付き合い気願いたいと思いまして、<br />こうやってですね、原稿っていうものを持参いたしまして、<br />昨日も遅くまで、なれないパソコンに向かって<br />書いてまいりました。<br /><br />（会場から小さな笑いが起こる。以後、同様の反応は（笑）と表記）<br /><br />ところで皆さんはパソコンなんかを<br />普段から用いられたりしますか？<br /><br />あら、こんなにいっぱいの方がですかぁ。<br />さすが、今日は若い女性が多いって<br />伺っていただけはありますねぇ。<br /><br />お恥ずかしい話ですけど、<br />私は今だにだめなんですね。<br />私共の旅館の方でも、<br />若い社長さんに代わられてからは<br />インターネットというんですか、<br />それを通じての宣伝とかに力を入れたり<br />ご予約なんかも承っておりますから、<br />本来はね私ももう少しは<br />使いこなせなくちゃいけないんですけどね。<br /><br />普段から仕事でパソコンなんかを使うようにしていれば<br />今回みたいな時に、<br />こんなに苦労はしなくてすむんですけどね。<br />どうしてもみなさんような若い子達が<br />「女将さん、代わりにやりましょうか？」って、<br />私が三十分はかかる作業なんかを<br />ものの三十秒足らずで済ませちゃうもんですからね。<br />えぇ。（笑）<br /><br />ところで、<br />ブラインドタッチって言うらしいんですね。<br />あの、例の、自分の手元を見ないでも<br />正確にタイプしていけることを。<br />こんなことを言うと、<br />厚化粧の下の実年齢がばれてしまいそうで<br />大きな声では言いたくないんですけど、<br />やっぱりだめですねぇ。<br />私のように戦後の混乱期に幼少期を過ごした世代は<br />どうも横文字に弱いくせに憧れだけは人一倍強くて。（笑）<br />私なんかも、こんなおばさんなんですけどね、<br />やっぱりその「ブラインドタッチ」って言葉には<br />「カッコいいなぁ」なんて憧れちゃうんです。（笑）<br /><br />ちなみにですね。<br />今回、私のような、<br />田舎の温泉街の古びた旅館の女将をですね、<br />こんな、大勢の女性の、<br />しかも若くて意欲があって<br />溢れんばかりの可能性の塊のような皆さんたちの前に<br />引っ張り出してきて、<br />一つ赤っ恥をかかせようなんていう<br />意地悪な魂胆の持ち主のね、<br />「頑張れ日本の女性の会」の理事の<br />峰岸涼香さんなんかはね、<br />同じ昭和二十年代生まれとは思えない<br />流れるような指使いで<br />パソコンを扱われるんです。<br /><br />（笑）<br /><br />もうその一点だけでもね、<br />私なんかは峰岸さんへの強い憧れがあるもんですから<br />彼女から頼まれてしまうと<br />どうしても断れないものですから、<br />今、こうやって皆さんの前で<br />お話をする羽目になっているしだいなんです。<br />えぇ。（笑）<br /><br />まぁそんなわけですから、<br />聡明な現代女性に向かってですね、<br />どんな話をしたらいいんですかって、<br />私も少々憤慨気味に<br />理事さんに伺ったんですね。<br />そしたら、<br />「ほら、あの、あなたの就職活動についてなんかいいんじゃない」って<br />仰られたもんですからね、<br />私のほうも「じゃぁそうします」という二つ返事をしまして、<br />今日はそんあな話をですね<br />することになりました。（笑）<br /><br />これは私がですね、<br />丁度今の皆さんくらいの年齢の頃の話ですから、<br />考えてみたら、もうずいぶんと昔の事になります。<br />どうして、私が温泉旅館の女将なんかになったかなんて話です。<br />でも、もしかしたら、今の皆さんには<br />今一ピンとこない話になってしまうかもしれません。<br />でもまぁ、よかったら軽い気持ちで聞いてみてください。<br /><br />私、もともとの生まれは名古屋だったんですが、<br />当時は東京の方で一人暮らしをしながら<br />大学に通っておりました。<br />私の両親という人は<br />私たち兄妹が幼い頃から共働きをしておりまして、<br />ちなみに、父は建築家、母は女医という家庭でした。<br />二人ともとても子供たちの教育には熱心で、<br />特に母の方は、<br />娘の私に対して幼い頃から<br />「大学は必ず出なさい。しかも資格を得るように」<br />って教えるような人でした。<br />私もけっこう素直子だったもので、<br />母の言いつけどおり、<br />東京の大学では会計学を専攻しましたし、<br />卒業後はどこかの会計事務所で経験を積んで<br />いつかは独立するというのが、<br />妙に現実的な学生だった<br />私の人生設計になっておりました。<br /><br />ところで、今朝、こちらの大学のキャンパスを<br />歩いていて感じたのですが、<br />女子生徒さんがとっても多いんですね。<br />こんなことを言っていたら笑われてしまうんでしょうけどね、<br />本当にビックリしました。<br />というのも、私が学生の頃はまだ、<br />四年生の大学における女子の割合というのは<br />絶対的少数派の時代でしたし、<br />しかも会計専攻なんてなると<br />ほとんどスカートなんかは皆無でしたから。<br /><br />それですからね、<br />私の娘や孫たちなんかにこの話をしますとね、<br />「おばあちゃん男子に囲まれてずいぶんもてたでしょう？」なんてね<br />聞いたきたりするんです。<br />孫の手前、「ええそうよぉ」なんて言いたいところなんですけどね<br />これが意外とそういうわけでもなかったんです。（笑）<br />まぁ、私の容姿に起因するところも<br />多少なりと大きかったのかもしれませんが、<br />それ以上にね、逆に女子が少なすぎて、<br />どうも皆さん遠慮されてしまうらしいんですね。<br />これはその、後々の人生経験も踏まえての意見ですが、<br />古い日本の男性というのは、<br />周囲の目があったりすると<br />欲しいものであっても<br />みんなでもう譲り合っちゃうんですね。（笑）<br /><br />おかげで、こっちはせっかく親元を離れて<br />楽しい一人暮らしをしながら、<br />恋の一つでもしたいなぁなんて思っているのに<br />ぜんぜんもてないわけです。<br /><br />（笑）<br /><br />でもまぁ、その辺は<br />私も当時は女の子でしたから、<br />友人たちと集まっては、<br />「経済学部のなになに君は素敵よね」とか、<br />「いやいや教育のだれそれの方が魅力的だわぁ」なんてね、<br />そんな話で盛り上がっていたわけです。<br />もちろん、もてないながらも、<br />ちゃっかり好きな人なんかを見つけてもいるわけなんですね。<br /><br />私が恋をしていた相手というのは、<br />当時、私の大学の近くの事務機の中卸会社で<br />アルバイトをしていた他校の学生の方だったんです。<br /><br />私は学生時代、一時期ですが、<br />新劇に熱をあげていた時期がありました。<br />まぁいわゆる追っかけですよね。<br />お気に入りの劇団の公演なんかは<br />連日見に行っていたわけです。<br />学校の授業なんかほったらかしで。（笑）<br />ですから、仕舞いにはあまりにも頻繁に顔を見せるもので<br />劇団員の方にも顔を覚えてもらっちゃって、<br />地方公演なんかでどうしても人手が足りないときなんかは<br />無料アルバイトで応援に呼ばれたりなんかしていたんですね。<br />それはそれで、<br />とっても楽しい経験だったんですが、<br />そうなるとどうしても肝心の学業の方が疎かになってしまいます。<br />それでも、出席確認の方は気のいい友人たちがね、<br />適当にごまかしていてくれるのですが、<br />問題は、欠席した授業のノートを<br />友達から借りてきて写す作業だったんです。<br />なんたって結構な量なんです。<br />しかも、そういう面倒な作業をすぐになんかはやらないたちなもので<br />期末試験の直前になって大慌てでノートを借りてくるわけです。<br />貸してくれる友人だって自分の勉強をしなきゃいけませんから<br />そうそう長いことは借りてもいられない。<br /><br />当時は今のように、コピー機なんて便利なものが<br />近所のコンビ二なんかにはありませんでしたから、<br />毎回、試験間際になると泣きながら徹夜でノートを写すわけです。<br />おかげで、試験の結果も芳しくないのも当然ですよね。<br />で、ある時ですね、<br />私のこの体たらくぶりを見て、<br />余りに同情してくれた友人がですね、<br />大学近くの事務機屋さんで<br />実演用においてあるコピー機を使って、<br />忘れもしません、<br />あれはキャノンの国産第一号コピー機だったんですけどね、<br />こっそりとノートのコピーをとってくれるらしいって<br />教えてくれたわけなんです。<br />試験前で、藁でも袖の下でもつかみたい気分だった私は<br />そんな便利なお店があるのであればと、<br />さっそく山のようなノートを抱えて<br />教えてもらった中卸屋さんに出向いたわけなんです。<br /><br />そして、私が片思いした彼というのがですね、<br />バイト先のコピー機をこっそり使って<br />私のような不真面目な学生を相手に<br />まぁいったら、今でいうベンチャービジネスってやつをしていた<br />学生アルバイト君だったんです。<br /><br />とはいってもお店のコピー機を勝手に使っているわけですから<br />立派な横領行為です。<br />どうしても私がコピーを依頼にかこつけて<br />彼に会いに行けるのも<br />他の社員の方々がお帰りになった<br />夜遅くに限られたわけです。（笑）<br />そりゃぁドキドキしましたよ。<br />田舎から出てきた真面目な小娘にとっては<br />そうとうな勇気がいる行為だったはずなんですけどね、<br />自分でノートを写すことを考えると<br />どうしてもその悪い誘惑にかてずに、えぇ。（笑）<br /><br />しかも、そのバイト君がとってもハンサムで優しい方だったものですから。<br />私が大好きだった劇団の看板役者さんなんかよりも<br />ぜんぜん素敵なんですね。<br />「男というのは、ちょっと影をもっているくらいのほうが<br />素敵に映るもんなんだわぁ」なんてね、<br />文学部の学生みたいなことを思いながら<br />コピー機の彼に会いに行っていたわけです。<br /><br />でもね、結局、そのアルバイトの男性に憧れるようになってからは<br />少しずつ私の中の「劇団熱」も収まってしまいまして。<br />そしたらおのずと授業にもちゃんと出席するようになって<br />そうなると、わざわざクラスメートに頭を下げて<br />ノートを借りてきてコピーを依頼する必要も無くなってしまったんですね。<br />でも、片思いの彼にはどうしても会いたいから<br />友人たちの間を尋ねまわっては<br />ノートのコピーが必要な子を見つけては<br />半ば強引にコピーをとってきてあげるってことをし始めたりして。<br /><br />まぁ、別にコピーをとる必要が無くたって<br />彼に会いたいなら<br />ただ素直に会いに行けはよかったんですけどね。<br />私も今と違ってだいぶ恋には奥手でしたから、<br />遠回りでも、面倒でも、<br />律儀にコピーの用事を作ってじゃないと<br />彼に会いには行けなかったんですね。<br /><br />それでも、そんなにちょくちょくコピーが必要な友人が<br />見つかるものでもないのでね、<br />彼が働いている会社の前を素通りするだけの日々が<br />続いたりもするわけですね。<br />そうすると、それはとっても辛い毎日なんですけどね、<br />私としてはどうしようもない。<br />そんなこんなの片思いが一年以上も続きまして、<br />そろそろ卒業後の事を考え始める時期になってしまったんです。<br /><br />名古屋の両親からは、<br />毎日にように激励の電話がかかってき始めまして。<br />成績が中の上くらいの娘としても、<br />親の期待を受けて就職活動に本腰を入れ始めなければと<br />いうことになったわけです。<br /><br />昔も今も、<br />就職活動を始める学生がまず最初にすることといえば<br />履歴書の作成ですよね。<br />私もね、コクヨの一律のやつをですね<br />大学の就職課でもらってきて、<br />一生懸命書き込みました。<br /><br />皆さんもきっと、経験があると思いますけど。<br />この履歴書の作成というのは、<br />なんともいえない緊張感があるものなんですよね。<br />自分の人生に対する緊張感とでもいうのでしょうか。<br />もしかしたら、この一枚で<br />自分の人生が決まってしまうかもしれないなんてね、<br />ちょっと大げさですけどね考えたりもしてね。<br />なんせ当時はまだまだ終身雇用の束縛に<br />学生たちの意識ががんじがらめになっていましたから。<br /><br />で、下書きの末にようやく清書した履歴書の中で<br />きれいな奴だけを選びましてね、<br />正面右上に顔写真をはっていくんです。<br />この証明写真もね、<br />撮影の前の日には自分へ発破をかけるつもりで<br />奮発して美容院に行って<br />髪を整えてもらっていたんです。<br />ところが当日の朝起きてみたら、<br />どんな寝相で寝たのかわからないんですけど<br />酷く首を寝違えていてカメラに向かって<br />まっすぐに向くと激痛が走るわけです。<br />おかげで、わざわざ写真屋さんで撮っていただいたのに<br />いたく不機嫌そうな表情で、<br />面接官を睨みつけるような顔をして出来上がってるわけです。<br /><br />しぶしぶこの写真を履歴書に貼って、<br />希望の会社の人事部宛に郵送したり、<br />直接持っていたりしました。<br />それもね、写真の焼き回しだって無料じゃないですから、<br />貴重な写真を貼った履歴書を持ち込む相手は<br />どうしても第一希望の大手会計事務所なんかに<br />しぼらてしまうわけなんです。<br />そうなると、滑り止めで履歴書を送る相手なんかが<br />問題になってくるんですけどね、<br />そういう場合普通、写真なしで持っていくんですね。<br />本当の話ですよ。<br />当時はそれでもちっとも怒られなかったんです。<br /><br />ただ、私の場合は、<br />憧れの人がコピー屋さんですから、<br />写真の出来の悪さを忘れて<br />写真付履歴書をコピーしてもらって<br />それを就職希望先に送ることにしたんですね。<br />白黒の写真付の履歴書です。（笑）<br /><br />そういうわけで、<br />大好きな彼に正々堂々と会えることにドキドキしながら<br />彼のバイト先を例のごとく夜に伺ったら、<br />彼が一人で自分の履歴書をコピーにかけているんところだったんですね。<br />私は自分の履歴書を片手に呆然としてしまいましてね。えぇ。（笑）<br />その後、二人で大笑いしましたけど。<br /><br />ひょんなことで、大好きな彼と履歴書を見せあいっこすることになりまして<br />「・・・何この写真～ちょう怪しい～あはは」って写真をみるふりしながら<br />しっかり相手の誕生日とか趣味なんかをチェックしたりしているんですね。<br />しかも、心臓が破裂しそうなくらいドキドキしながらです。<br />だって、そのあいだにも、彼に、<br />首を寝違えている写真を見られているわけです。<br />「えええやだよーっ」って必死で写真を隠す私の手を<br />彼が半ば強引に払ったりしたら、<br />「あっ彼に手をにぎられた」って。<br />まぁ正確にはにぎられたのは手首の方なんですけどね、<br />さらにドキドキして。<br /><br />そのわりには普通の写真だから拍子ぬけしたのか<br />「・・・ふ～ん。なんか普段とは違うね。あ、俺より一個齢上なんだ」と、<br />なんだか平凡なリアクションとともに履歴書は突き返されたんですね。<br /><br />なんか、その態度にすごくショックを受けてしまいまして。<br />当然といえば当然なんですけど、<br />「あぁ、この人は、私が抱いたみたいなドキドキを<br />感じてはいないんだなぁ」ってね。<br /><br />それだけの事なんですけどね、<br />それはそれで私の人生には大きな衝撃がありました。<br /><br />ここで、ちょっと話が変わるんですが、<br />私は先ほどもお話しした通り、、<br />現在、静岡で温泉旅館の女将をしております。<br />小さな宿ですから、<br />大した立派なサービスがあるわけではないんですけどね、<br />私が大学卒業直前に、<br />初めてこの旅館に客として泊まって以来、<br />心からほれ込んでいるといいますか、<br />人様にもこれだけは自慢できると思えるものが<br />一つだけあるんですね。<br />それは、私どもの宿の地下から湧いてくる<br />温泉を使ってつくる温泉玉子なんです。<br /><br />皆さんは、今、もしかしたら<br />なんだ温泉玉子かって思われたかもしれません。<br />私もね、実際に食べてみるまでは<br />大したもんではないと思っていたんです。<br /><br />ではちょっとお伺いしますけど、<br />皆さんのなかで温泉玉子ができる<br />構造っていうのを<br />知っておられる方がおられますか？<br /><br />中には、<br />玉子をただかごかなんかに入れて<br />温泉の中に入れておいたら<br />温泉玉子になるんじゃないんですかって、<br />勘違いされている方も<br />結構多くおられるんですけどね。<br />これはですね、そう簡単なもんでもないんです。<br /><br />といいますのもね、<br />玉子の黄身と白身というのは<br />それぞれ固まる温度が違うものなんですね。<br />黄身は60度、白身は70度で茹でると<br />凝固していくんです。<br />ですから、温泉玉子独特の、<br />黄身も白身も半熟の状態にするには<br />二つの異なる凝固点の間で<br />玉子を茹でる必要があるんです。<br />ただ、問題は、<br />もともと地下からわいて出る温泉というのは<br />機械で温度をコントロールしたものとは違って<br />一日の間でも温度が微妙に変動しているものなんですね。<br />ですから、おいしい温泉玉子を作るには<br />湧いて出るお湯の温度を常に把握して<br />玉子を入れる場所や時間を微妙に変える<br />必要があるんです。<br />これは結構手間と時間がかかる作業なんです。<br /><br />でも、だからといって、<br />人間の手で完全に温泉の温度をコントロールして<br />その中で玉子をゆでたら、<br />それはやはり温泉玉子ではなくなってしまうと<br />私なんかは思うんです。<br />味の均一化は容易になるでしょうけど、<br />面白みといいますか、<br />温泉玉子独特のワクワク感みたいなものは<br />失われてしまうと思うんです。<br />私どもは、<br />そんなゆで卵を「温泉玉子」とは呼べない気がするんです。<br /><br />なんといいますか、<br />人の心にも時として温度差があったりすると思います。<br />自分の感動や興奮といった喜怒哀楽を<br />自分が本当に大切だと思う人にも感じてもらいたい、<br />どうか伝わって欲しい。<br />そんな風に考えるのは、<br />心をもった私たちになら当然の事だと思うんですね。<br /><br />でもね。<br />いつだって、<br />自分の思うとおりに<br />誰かの心が動くわけじゃないって<br />私たちは知っているじゃないですか。<br />どんなに好きな人でも、<br />どんなに愛しい人でも、<br />どんなに大切な人でも、<br />相手の気持ちはもう少し、<br />熱いお湯じゃないと固まらないってことがあるから、<br />人生ってどうしようもなくワクワクして<br />楽しいものにももなるんじゃないでしょうか？<br /><br />私は、そんなことを、<br />小さな温泉旅館の女将になって以来<br />毎日、感じているんです。<br /><br />これが、私が、温泉旅館の女将になった理由です。<br /><br />ですから、どうぞ、<br />皆さんの中で、<br />想いが伝わらないせつなさや届かない寂しさに<br />心が立ち止まってしまった際には、<br />私どもの旅館にお越しになってください。<br /><br />溢れるほど湧いて出る温泉以外には大して何もありはしませんが、<br />心をこめて作った温泉玉子の味を<br />どうぞ味わってみてください。<br />少しは、ワクワクできるかもしれませんから。<br /><br /><br />そんなお話でした。<br />本日はどうもありがとうございました。</p>
]]></content:encoded></rss:item><rss:item rdf:about="http://www.creative-platform.com/oneemaster1/2007/6/19/585882746885.html"><rss:title>毛蟹は１匹？それとも１パイ？</rss:title><rss:link>http://www.creative-platform.com/oneemaster1/2007/6/19/585882746885.html</rss:link><dc:creator>佐藤寛孝</dc:creator><dc:date>2007-06-19T06:05:02Z</dc:date><dc:subject></dc:subject><content:encoded><![CDATA[<p>今回は留守電に残っていたメッセージを再生しているという、<br />ちょっくらコントちっくな心構えで読んでいただけるでしょうか。<br />ちなみに、句点の後なんかに、<br />ネクタイを緩めたり、ちょっと笑顔をほころばせたりしながら<br />読んでみると、多少、雰囲気なんかが出るかもしれません。<br /><br /><br />では、お好きなタイミングで再生ボタンを「ピッ」と<br />押してみてください。<br /><br /><br />「メッセージハ　ロッケンデス。<br /><br />イッケンメノ メッセージヲ　サイセイシマス。<br />ゴゴ　クジジュウヨンプン。<br /><br />あぁもしもし。大輔ですか？<br />えーとぉ、母さんですよ。<br /><br />あのぉ、ちょっと、<br />今の呼び出し音の後のメッセージの声が女性だったから<br />母さん少しどきってしました。<br />母さんちゃんと大輔の番号にかけたつもりなので・・・<br />これは大輔の電話なのよね？<br /><br />・・・・・・。<br /><br />なんだかちょっと不安です。<br />もし、これが大輔の番号でなかったら<br />母さん今、誰に向かって喋っているのかしら？<br /><br />そこにいるのは大輔よねぇ？<br />でも、もし間違っていたら<br />どこのどなた様か存じ上げませんが<br />大変お恥ずかしいことをしております。<br />どうも大変ご迷惑をおかけしてもうしわけありません。<br /><br />大輔、母さん、なんだかちょっと自信がないから<br />やっぱり、またかけ直します。<br /><br />ガチャッ。<br /><br />ピィ――。<br /><br /><br />ニケンメノ　メッセージヲ　サイセイシマス。<br />ゴゴ　クジニジュップン。<br /><br />もしもし、大輔、父さんです。<br />久しく声を聞いておりませんが、<br />元気にしていますか？<br /><br />特に用があったわけではないんですが、<br />さっき母さんから電話があってな。<br />「大輔の家の電話番号が変わったという<br />連絡はありましたか」って聞かれてね。<br />そんなことは聞いてなかったんだが、<br />まぁいい機会だからと思って電話してみました。<br /><br />そっちは今頃、夜の１０時過ぎか。<br />この時間に留守ということは、<br />まぁ元気にやっている証拠なんだろう。<br />若いうちはちょっとくらい体に無理いわせても、<br />めいいっぱいやりなさい。<br /><br />それから、このメッセージを聞いたら<br />時間があるときでいいから<br />実家に電話をしてあげてください。<br /><br />それでは、えぇ、失礼いたします。<br /><br />ガチャ。<br /><br />ピィ――。<br /><br /><br />サンケンメノ　メッセージヲ　サイセイシマス。<br />ゴゴ　クジヨンジュウニフン。<br /><br />もしもし、大輔ですか？<br />母さんです。<br /><br />さっき、一回電話したんだけど<br />母さん、ちゃんと大輔の番号にかけたか<br />不安になっちゃって、<br />途中で切ってしまいました。<br /><br />それで、今、お父さんに電話して尋ねたら、<br />それはきっと電話の中に入ってる、<br />なんって言ってたかしら、<br />ほら、自動的に答えてくれる、あれ、<br />その、器械の声だろうって。お父さんが。<br /><br />母さんてっきり知らない人の番号に<br />かけちゃったと思って。<br />だって機械にしてはとっても素敵な声なんだもの。<br /><br />お父さんも、酔っ払って電話した時に<br />勘違いしたことがあるって言って笑うんですよ。<br />母さんは朝からお酒を飲んでるのかって、<br />からかわれちゃいました。<br />母さんは相変わらず器械音痴で困ってしまいます。<br /><br />こないだもね、優子さんが<br />子供たちを学校に送った帰りに<br />よって帰ったんだけど。<br />最近じゃ、宇都宮もけっこう危なくなってきてるから、<br />小学校も、低学年の子供は<br />親が学校まで送り向かいしてくださいって<br />そんな風に言われるんですって。<br /><br />隆史や大輔や絵里が子供の頃はねぇ、<br />大きいお兄ちゃんやお姉ちゃんが<br />小さい子供たちを連れて登校してたんだけどねぇ、<br />ほら、去年、今市で子供が襲われた事件があったでしょう。<br />あれからはもう、通学路には町内会の皆さんが<br />持ち回りで立つようになって。<br />それでも心配な親御さんには、<br />直接送り向かいしてくださいって、<br />学校から言われるんですって。<br /><br />宇都宮も変わったわねぇ。<br />きっと大輔が帰ってきたら、<br />ビックリするかもしれないわねぇ。<br />ほら、桜通りのところにあった長崎屋も<br />とうとうつぶれちゃって、<br />隣のダスキンの土地もあわせて、<br />今年の秋には、そこに、<br />大きなショッピングモールが出来るんだって、<br />父さんが言ってました。<br /><br />「あそこは年中閉店セールしてるけど、<br />いつつぶれるんだろうね」って、<br />佐藤さんのところのヒロ君が<br />万引きで停学になったときに<br />あなた言ってたでしょ。<br />母さん、なんだか昔の事思い出しちゃいました。<br />そういえば、<br />佐藤さんのお母さん、<br />お元気にされているかしらねぇ？<br /><br />あれ？母さん何の話をしようとしていたのかしら？<br />あっそうそう。優子さん。優子さんの話ね。<br />もう、母さん、すぐ話が飛んじゃうの、困ったものねぇ。<br />まぁ別に大した話じゃないんですけどね。<br /><br />ただ、こないだね、優子さんが学校の帰りに寄ってくれた時に、<br />二人でお茶飲みながらお喋りしていたら、<br />「義母さんもメールの使い方を覚えたらいいですよ」<br />って、そんなことを突然言いだしたのよ。<br /><br />大輔や絵里はね、ビックリするかもしれないけど。<br />母さんだってメールがどんなもかってことくらいは知ってるのよ。<br />お父さんが時々、<br />あなたたちから送られてきた手紙を<br />携帯電話で見せてくれるからね。<br />これがメールなんだって。<br /><br />でも、母さんほら、根っからの器械音痴でしょ。<br />だから優子さんに、<br />「メールって難しいんじゃないですか」って尋ねたのよ。<br />そしたらほら、優子さんって、<br />以前はスイミングスクールの講師をやっていたくらいの人だから<br />いろいろ人に教えるのが好きなのね。<br />「そんなことありません。簡単ですよ」ってね、<br />「私が教えますから」って言ってくれたのよ。<br />本当に、器量もいいし、優しいし、<br />なんてすてきなお嫁さんを隆史は見つけたもんだなぁって<br />母さんちょっと嬉しくなっちゃって、<br />「じゃぁ、メール、勉強してみようかしら」って、<br />そういうことになったの。<br /><br />一応父さんにも相談したらね、<br />それはいいって。これが大賛成なのよ。<br />なんでもね、帰りの新幹線の中から<br />「何時に駅へ着くから迎えにきてくれ」って、<br />毎晩携帯から電話してくる時にね、<br />周りのお客さんに迷惑になるからって<br />いったん席を立って電話をしなくちゃいけないんだって。<br />でも、メールで母さんに知らせられたら<br />それしなくていいから、凄く助かるって。<br />なんだかそれも、お父さんらしい理由よね。<br /><br />で、優子さんにもね、<br />「メールなら、絵里ちゃんや大輔さんにも<br />時間を気にしないで連絡できますよ」って<br />言われちゃったから。<br />ほら、ニューヨークは時差があるでしょ。<br />たまに用事があったりしてあなたに電話しようと思っても、<br />そっちの時間にねぇ、どうしても母さん慣れないもんだから、<br />なんか気になっちゃって<br />そうなるとどうも電話するのが億劫になっちゃうのよ。<br /><br />でも、メールなら、<br />ほら、いつでも大輔や絵里にも連絡できるじゃない？<br />いい機会だから初めてみようか・・・<br /><br />（ピンポーン）<br /><br />あら、ちょっと、どなたかみえたみたい。<br />大輔、悪いけど、母さんいったん切りますね。<br /><br />ガチャッ。<br /><br />ピィ――。<br /><br /><br />ヨンケンメノ　メッセージヲ　サイセイシマス。<br />ゴゴ　ジュウイチジニフン。<br /><br />もしもし？もう、まだ帰ってないんだねぇ。<br />母さんですよ。<br />いつ電話しても、いないんだから。<br />もう、母さん今日、三回も、<br />知らない女の人の声にドキってしちゃったじゃない。<br /><br />若いからって、働き過ぎないようにね。<br /><br />そうそう、さっきのはね、<br />クロネコの鈴木さんでした。<br />明日からこっちは連休だから、<br />今日はいつもより配送先が多くなって<br />珍しく午前中にお届け物持ってきてくれたんだって。<br />別府の良子叔母さんから大きなな荷物が届きました。<br /><br />クール宅急便で「海の幸」って書いてあるから、<br />腐るものだとまずいなぁと思って<br />お父さんが帰ってくる前に中をあけてみたら、<br />りっぱな毛蟹が山のように入っていて、<br />母さんビックリしちゃった。<br /><br />毛蟹なんて、どうしたのかと思って、<br />今、慌てて叔母さんのところに電話してみたら、<br />「あらもう着いたの」って落ち着いた声で。<br /><br />なんでも叔母さん、<br />昨日まで婦人会の研修旅行で<br />北海道に行ってたんだって。<br />それで向こうの朝市をのぞいて、<br />お土産になにか新鮮な海のものを<br />自分の家に送ろうと思っていたら、<br />毛蟹が積まれてる棚を見て、<br />急に絵里の顔を思い出したから、<br />うちにもお裾分けして下さったんだって言うのよ。<br /><br />ほら、昔、絵里が学校の授業中に<br />毛蟹が主人公の漫画を<br />教科書の端に書いていたら、<br />通知表の備考欄に<br />「荒削りながら、見過ごせない面白さと迫力のある作品です」って<br />担任の工藤先生に偉く褒められたことがあったでしょ。<br />叔母さんったら、そんなずいぶんと昔の話を覚えていたらしくて<br />市場で蟹を見つけて、<br />そうだ絵里にも送ってあげようって。<br />それも、立派なのを８パイも。<br />なんだか、良子叔母さんらしいでしょ。<br /><br />でね。せっかくだから、<br />これから半分を絵里のところに送ってこようと思うんです。<br />大輔にも毛蟹を送れたらいいんだけどね。<br />ニューヨークまでは、<br />さすがの鈴木さんでもお届けできないそうです。残念。<br /><br />じゃぁ、まぁそういうことだから、<br />また、明日にでも電話しますね。<br />はい、じゃーね。<br /><br />ガチャ。<br /><br />ピィ――。<br /><br /><br />ゴケンメノ　メッセージヲ　サイセイシマス。<br />ゴゴ　ジュウイチジニフン。<br /><br />あっ、遠藤さん？須藤です。<br />この時間ならまだ、<br />お家には帰ってないだろうなって思ったから、<br />留守電にメッセージを残すつもりで電話しました。<br />なんか直接話す勇気がなくて、<br />でもメールだと気持ちが上手く伝えられるかわからないから・・・。<br /><br />あの、さっき、私が言ったこと、もしかしたら<br />私とっても失礼なことを言ってしまったんじゃないかって。<br />本当に深い意味はなかったんです。<br />正直言うと、本当は、<br />素直に嬉しかったし・・・。<br />ただ、なんか、ビックリしちゃったのと<br />でも真面目に考えて答えなきゃっていう気持ちが混ざって<br />上手く言葉にならなくて。<br />それで、あんなふうな言い方になってしまって。<br />ダメですね、私。<br /><br />今だって、電話をかけるまでは<br />あれを言おう、これを伝えようって考えていたのに<br />喋り始めたら、自分の口から<br />誰か知らない人の言葉がでて来るみたいで・・・。<br />私、まだ、混乱中みたいです。<br /><br />ごめんなさい。本当に。余計に混乱してきて<br />遠藤さんをもっと混乱させていまいますね？<br />混乱混乱ばっかり言ってるし。<br /><br />本当にごめんなさい。<br />また、明日、電話してもいいですか？<br />とにかく、今夜は寝て、頭を冷やします。<br />一方的なメッセージですけど、<br />とにかく、お休みなさい。<br /><br />ガチャ。<br />ピィ――。<br /><br /><br />ロッケンメノ　メッセージヲ　サイセイシマス。<br />ゴゴ　ジュウイチジゴフン。<br /><br />あっお兄ちゃん？絵里ですけど。<br />元気？<br /><br />あぁ～なんだぁ～～留守かぁ。残念。<br />いっつもタイミング悪いなぁ。<br /><br />さっきね、お母さんからシャメがとどいたんだぁ～。<br />もう、超意味不明過ぎて逆に笑えたから、<br />お兄ちゃんにも<br />パソコンのアドレスに転送しておくね。<br /><br />あっていうかぁ、知ってた？<br />お母さん最近携帯買って、メール始めたの。<br />結構、なぞめいたメールが届くんだよ。<br /><br />とりあえず、写真見たら感想聞かせてね。<br />じゃっ！<br /><br />ガシャ。<br />ピィ――。<br /><br />アタラシイ　メッセージハ　イジョウデス。<br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><span class="full-image-block 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]]></content:encoded></rss:item><rss:item rdf:about="http://www.creative-platform.com/oneemaster1/2007/6/9/338578251373.html"><rss:title>キミハモウ、ボクノモノ</rss:title><rss:link>http://www.creative-platform.com/oneemaster1/2007/6/9/338578251373.html</rss:link><dc:creator>佐藤寛孝</dc:creator><dc:date>2007-06-09T02:39:26Z</dc:date><dc:subject></dc:subject><content:encoded><![CDATA[<p>お客さん、遅くまでお仕事ですか？<br />そうですか。ご苦労様ですねぇ。<br /><br />いやぁ～私はもう今夜はこのまま回送です。<br />えぇ、もうこの時間じゃ客見つけるより<br />流してるガス代の方が高くなっちゃいますかね。<br />ちょっと前まではね、<br />頑張ればそこそこ稼げたのが<br />この業界だったんですけどねぇ、<br />今はもうだめですねぇ。<br />新規参入の自由化ってやつでね<br />街には空車のタクシーがあふれてますよ。<br />今夜はここらが潮時です。えぇ。<br /><br />あれ？<br /><br />いやあの、<br />お客さんそれって、<br />もしかして、iPodってやつですか？<br />お客さんもあれですか？<br />その中に、何千曲も、<br />なんていうんでしたっけか、<br />あの、ダウンロードしてあるんですか？<br /><br />すみません。<br />名前は聞いたことがあったんですけど<br />実物をちゃんと見たのは数えるほどなもんで。<br />いや実はね、<br />中学生になる娘の友達に<br />ユキちゃんっていう子がいるんですけどね。<br />これが年中日焼けしてるせいで<br />スイカの種みたいな子なんですよ。<br />で、その子が娘のところに遊びに来たときに<br />挨拶してきた時に一度見ましてね、<br />あれがiPodっかって。えぇ。<br /><br />いやぁ別に興味があるってわけじゃないんですけどね。<br />ちょっとおもしろい話を、<br />えぇ、そのiPodっていう奴に関して<br />最近聞いたばっかりだったもんでつい。えぇ。<br /><br />ありゃたしかおとついだったかな。<br />九段下あたりから三軒茶屋まで<br />若い女性二人組みのお客さんを<br />お乗せした時の話なんです。<br />確か夕方頃だったはずですね。<br />遅めの昼食をとって、<br />最初に乗せた客さんが皇居の方にいそがれていて<br />その後でしたから。<br /><br />そうですねぇ。年のころで言えば<br />20代後半から30代前半くらいでしょうか？<br />一人の女性はスーツ姿でね。<br />料金のほうもこちらの方がお支払いになりました。<br />若いのにとても丁寧な話し方をする方で、<br />とても好感のもてるっていうんですか、えぇ、<br />息子がいたらお嫁さんにしたいタイプって奴ですね。<br />ほら、あの、芸能人でいたでしょ。<br />父親が有名な歌舞伎役者の。<br />なんって言ったけかなぁ？分かりますか？<br />うーんどうも齢をとると、<br />こういう時にぱっと名前が出てこなくなっちゃって。<br />まぁいいですねそんなことは。<br />とにかくとても感じのいいお客さんだったんです。<br /><br />で、その方のお連れの女性ですがね、<br />そちらの方は多少カジュアルな格好でした。<br />喋り方もね、どことなく子供っぽいと言うか。<br />試験がどうとか仰ってましたから、<br />もしかすると学生さんだったのかもしれませんね。<br /><br />お二人ともね、<br />とてもくだけた感じで話されていて、<br />そうですねぇ仲の良いご友人って所でしょうね。<br />うーん。もしかしたら久しぶりに再会した<br />旧友ってやつだったのかなぁ。<br />もう本当によくお喋りされてましたから。<br /><br />なんかしかしあれですね。<br />こんな話をすると、<br />いい年したおじさんが<br />若い女性のお客さんに興味津々みたいに<br />聞えちゃうかもしれませんね。<br />なんか嫌だなぁ。<br />どうぞ勘違いしないでくださいよ。<br />きょうびこのご時勢です。<br />別に、若い女性のお客さんが<br />珍しいわけじゃありませんし、<br />こちらも仕事ですから<br />普段は大抵お客さんの会話なんかに<br />必要以上に関心なんかもたないものなんです。<br /><br />いやただね、この時は<br />その若いお嬢さんたちの会話が<br />ちょっとおもしろかったもんでね、<br />ついつい聞き耳を立ててしまったていう。えぇ。<br />お恥ずかしい話なんですけど。<br /><br />というのもですね、<br />一人のお嬢さんがね、<br />今さっきのお客さんみたいに<br />カバンからiPodを取り出したんですよ。<br />まぁ正確にはその様子を見たわけじゃないんです、<br />ただ二人の会話でね。<br />えぇ、分かったんですよ。<br />ちょうど車内に流れていた有線放送の<br />音楽に及んでいた時ですね。<br /><br />実は、うちの娘がね、iPodが欲しいって。<br />クラスの友達もみんなもっているんだよって。<br />ほら、さっきちょっと話した、<br />一番仲良しのユキちゃんって子もね<br />最近ついに買ってもらったそうでね。<br />「私も買って」ってなきつかれていたもんで。<br /><br />それで、後部座席のお嬢さんがね、<br />まぁ齢はだいぶうちの娘よりも上でしょうが<br />偶然にもiPodってやつの話を始めたもんでね、<br />ついきになってしまって。えぇ。<br /><br />車内にはね、なんっていったかなぁ？<br />ほらあの、おもしろい名前のグループ。<br />焼肉のメニューにありそうな。<br />本当にだめだなぁぜんぜん思い出せないや。<br />つい先日も、娘にこれくらい知らなきゃ<br />お父さんただの「オヤジ」だよ、<br />なんて言われて、<br />必死に覚えたばっかりなんですけどね。<br /><br />えっ？なんですか？<br />あっそう。それそれです。<br />いやさすがお客さん。<br />若い方だけはありますねぇ。<br />そう、そのコブクロってグループです。<br />えぇ、かれらの曲がラジオから流れてきたんですね。<br />まぁこっちは、二人のお嬢さんが、<br />「あっコブクロだ」っていうんでね<br />分かったんですけどね。<br /><br />そしたらね、ついさっきまで<br />この世の終わりがもう直ぐそこまで<br />きているのかってくらいの勢いで<br />話をしていたらお嬢さんたちがね、<br />急に静かになってしまって。<br />えぇ、もうどちらからっていうわけでもなく。<br />二人して、ぱたってね。<br /><br />どうやら、そのコブクロさんの曲をね<br />聴いているらしいんですね。<br />それで静かになったらしいんです。えぇ。<br />数分ぐらいだったかなぁ。<br />次の曲にうつるまでね<br />不思議な静寂が流れてわけです。<br /><br />で、曲がかわって<br />そしたらまた、堰を切ったように<br />話始めたんですけどね。<br />なんだかわかんないんですけど、私、ホッとしたりして。<br />えぇ。なんかねぇ。（笑）<br /><br />で、その時なんです。<br />スーツ姿のお嬢さんがお連れさんに向かって、<br />「あの曲もってるんだけどなぁ～」って<br />すごくしんみりした声で言うんです。<br />あの曲っていうのはきっと<br />さっきまでラジオから流れていた<br />曲の事だと思うんですけどね。えぇ。<br /><br />そしたらもう一人の子がこたえるように<br />「うん。私もiPodに入ってる」って言ってから<br />おもむろに自分のバックから、<br />そのれいの、iPodってやつを取り出して、<br />「なんか不思議だんねぇ～～」って<br />二人して、困ったような声を出しているんですよ。<br /><br />うん？何が不思議なんだ？？ってね、<br />正直私なんかにはちっとも要領を得ないわけです。<br />どうです？お客さんには分かりますか？<br /><br />するとね、今度は<br />iPodを持っているほうの<br />お嬢さんが感慨深げに<br />おもしろいことを喋り始めたんですね。<br /><br />「iPodって、自分の好きな曲だけを<br />ものすごい数を入れられて、<br />しかもどこへでも持っていけちゃうじゃん。<br />私なんか、いつのまにか<br />４千曲も入ってるし。<br />最初はすっごいねぇ～って<br />便利だよねぇ～って<br />素直に感動してただけなんだけど。<br /><br />でも、最近思うんだけど・・・。<br />全部自分の好きな曲のはずなのに、<br />それでもやっぱり飽きちゃうんだなぁって」<br /><br />「すっごいわかるそれ」<br /><br />「だって私、ここのところなんか<br />iPodの中の、ほとんどの曲は聴かないもん」<br /><br />「全部自分が選んだ曲なのにねぇ～。<br />飽きちゃうんだよねぇ」<br /><br />ここでまたいったん沈黙です。<br />それから少したって、<br />スーツ姿のお嬢さんがおもむろに<br />口を開きまして、<br /><br />「でもさぁ。そのくせ、今みたいに、<br />偶然ラジオとかから流れてくると<br />なんか聴いちゃうんだよねぇ。<br />『あぁやっぱり、いい曲だなぁ～』って」<br /><br />「ねぇ～～」<br /><br />「コブクロの曲なんて、<br />もちろんiPodにも入ってるし<br />滅多に聴かないのになぁ・・・」<br /><br />そうやって、二人は三軒茶屋で降りるまで<br />「不思議だよね」って首を傾げあっているんです。<br />お客さん、そんなことを<br />若いお嬢さんが真剣に考えているわけですよ。<br />私は、なんだかどうもおかしくなってしまって。<br /><br />どんなに好きな曲でも<br />自分のものになった途端に飽きはじめちゃうって<br />悩んでいるわけです。<br />なんていうか、<br />いわゆる人間の悲しいさがみたいなものをねぇ<br />iPodに見出しちゃうんですよ今の子達は。<br />そしたらふいに、うちの娘もね、<br />こうやって大人になっていくのかってね<br />なんか妙に納得してしまいましたよ。<br />お恥ずかしいですけど、えぇ。（笑）<br />iPodにどんどん音楽を取り込んでいくように、<br />ちょっと気に入ったものを手に入れようと必死になったり、<br />好きになった人を自分に振り向かせることに躍起なったりね。<br /><br />持っていることにただただ安心して、<br />そこに自由や可能性なんかを見出した気になってね、<br />あふれんばかりの選択肢の中で<br />実は多くを失っていることにも気がつかないなんていうふにね。<br />そうやって自分の中に増えていった<br />なにかに、でも、どこかでちっとも満足していない・・・みたいにね。<br /><br />いやぁ～なんかすみませんねぇ、<br />くだらない話を長々としちゃって。<br />お疲れのところだったのに。<br /><br />あっそうそう、ところで、お客さん。<br />お客さんの、そのiPodには<br />どれくらいの曲が入っているんですか？</p>
]]></content:encoded></rss:item><rss:item rdf:about="http://www.creative-platform.com/oneemaster1/2007/6/6/418980020498.html"><rss:title>僕は君の中で二度死ねる</rss:title><rss:link>http://www.creative-platform.com/oneemaster1/2007/6/6/418980020498.html</rss:link><dc:creator>佐藤寛孝</dc:creator><dc:date>2007-06-06T06:08:49Z</dc:date><dc:subject></dc:subject><content:encoded><![CDATA[<p>私はね、マスター、<br />最近こんなふうに思うわけ。<br /><br />自分にとって大切な存在っているじゃない。<br />その相手が本当に大切な人ならば、<br />たとえこの先はお互いに違う道を生きて行くとしても<br />自分のことを憶えていてもらいたいっていう、<br />そんなせつない欲求って<br />誰しもがどこかでもっているんじゃないかって。<br />好きな人、愛した人、<br />心を持った人間なんだから<br />誰にでもいろいろあるじゃないって。<br />マスター、私はもうつくづくそう思うわけ。<br /><br />ねぇマスター。聞いてる？<br /><br />というのもこないだね、<br />久しぶりに昼間から映画を見てきたの。<br />神保町の古い映画館でね、<br />たった一人で行ったわ。<br />もう神田なんかに出向くの<br />すっごい久しぶりだから<br />行こうかどうかすっごく迷ったんだけど。<br /><br />うちのお店の馴染みのお客さんが、<br />実は神田で小さな商売をされている<br />社長さんなんですけど。<br />その社長さんがね、<br />先日二度目の不渡りを出しちゃって<br />とうとう会社をたたんで<br />田舎に帰られるっていうことになって、<br />ささやかですけど今までひいきにしていただいたお礼に<br />お店でお別れ会を開いたんです。<br />その時にね、社長さんが<br />「もうママに何もあげられるものないけど」って<br />酷く酔っ払いながら<br />しわくちゃの財布から<br />綺麗に二つ折りになった<br />映画の招待券を取り出して<br />一枚だけくださったのよ。<br />本当は自分で見に行こうって<br />思ってらしたらしいんですけどね、<br />会社や引っ越しなんかのゴタゴタで<br />時間がないからって。<br />「ママかわりに行ってきてよ」って。<br /><br />マスター。正直ね。私上手くお礼が言えなかった。<br />だって数年前なら、<br />仕事で行った外国のお土産だよって<br />ブランドもののバックとか時計とか<br />バンバンお店の子とかに配っていたような人がね、<br />最後には映画のチケットを一枚よこすんですよ。<br />なんだかすごく複雑な気分になっちゃって。<br />しかもね、<br />その時のボロボロのお財布がね、<br />悪いもの見ちゃったなって。<br />女は男性のそういう<br />無理しているところを<br />見てみぬふりしないと<br />せつなくなっちゃうでしょ。<br /><br />そう思ったら、もうこれまでのように<br />頂き物を粗末には出来ないなって、<br />銀座の女にしては珍しいことを思っちゃたわけ。<br />きっとあの擦り切れたお財布に<br />私たちは長いこと食べさしてもらってきたわけでしょ。<br />なんだかね、そんなこと思ったら<br />神田までだって<br />映画を見に行くくらいなんだって<br />そう思えてきたのね。<br /><br />で、その映画がね、なんだかちょっと<br />不思議な作品なんですけど、すごくよくって。<br />邦画でね、一人の女性の<br />太平洋戦争のお話なんです。<br /><br />でね、そのチケットをくださった社長さんって人は<br />お店でも結構お上手に遊んでる方のくせに<br />いっつも奥さんの写真を持ち歩いていて、<br />なにかっていうと人に見せたがるような方でね。<br />お店での態度もとっても紳士的でしたし、<br />いったら西洋的なダンディズムっていうのかしら、<br />最近じゃあまりみかけなくなった<br />気持ちのよい身のこなしをされる方で。<br />そんなふうに私は勝手に感じていたものだから、<br />ちょっとそんな社長さんから<br />戦争映画のイメージが<br />うまく結びつかなかったていうか・・・。<br /><br />でもね、映画が始まって<br />徐々にどうしてこの映画を社長さんは<br />見たかったのかなっていうのが<br />薄っすらですけどわかってきたっていうか。<br />私なんかに上手く説明できるか<br />正直ちょっと自身がないんですけどね。<br /><br />その主人公の女性が、<br />お話の中ではすごく高齢なんですけど、<br />女学生だった戦時中を回想するです。<br />とても淡々としているんですけど<br />その中でとっても印象的なシーンがあって。<br />それはどんなシーンかっていうと<br />戦争中に一人の若い士官の方と<br />女学生だった主人公が出会うんですね。<br />今で考えたら、もう信じられないくらい<br />硬派な出会いなんですけど、<br />まぁそこは言っても男と女ですから、<br />何かが始まりそうな<br />そんな期待を伴って出会うわけ。<br /><br />男の方はでも空襲で家族を失っていて<br />孤独とか寂しさみたいな影をもっているんです。<br />で、まぁ女なんかからしたら<br />そこは結構惹かれちゃうところなんだけど、<br />男は結局、主人公との関係を発展させる前に<br />戦死してしまうんですね。<br />きっとあの時代は、あっさりと人が死んだのよね。<br />で、その若い士官は自分が死ぬ直前に<br />彼女にいうセリフがあるんだけど、<br />それがなんだかとっても印象的なの。<br /><br />「どうか自分がこの世に生きていたことを<br />覚えていてほしい」って。<br /><br />もうこれって最高の殺し文句だと思わない、マスター？<br />そりゃ戦争っていう非日常が隣り合わせにあって<br />その中で必死に人を愛しているから<br />そんなことを頼めるわけだけど。<br />言えないわよね、そんなことなかなか。<br />だって、これってようは、<br />自分の愛した人の人生を縛るってことなんだから。<br /><br />でもそれは時代なのかしらね、<br />男も女もみんな<br />今よりも少しだけ<br />まっすぐっていうか、<br />自分以外の誰かに対して寛大だったのかな。<br />だって、その女学生は<br />死んでしまった若い士官との<br />せつない約束を必死に守って、<br />もう本当にちゃんと守ってね、<br />それからをずっと生きていくわけなの。<br /><br />これがこの映画の描く戦争や戦後なんです。<br />正直ね、お店にいらっしゃるお客さんの中には<br />難しいお話なんかをされ方も結構おられますからね<br />こちらも都合上、多少の教養はね、<br />もちろんお酒の席での教養ですけどね、<br />そういうのは持ち合わせてますよ。<br />でも、「戦後」なんて、<br />これまでは、どこかで一言で片付いてしまう<br />そんなぼやけた時間にしか<br />思っていたなかったのよね。きっと。<br />でも、そこには<br />ほんの少しの想い出を<br />ちゃんと忘れずに生きている<br />そんな人生があったんだなぁって。<br />そこに流れてきたのは、<br />私なんかは間違いなく<br />途方にくれてしまいそうにな時間なのよね。<br />そうやって、一人の女が生きてきたのかって。<br />これってもう、経済大国とか先進国なんていう、<br />なんかもうそういう大そうな考えなんかよりも<br />ずっと圧倒的なのよね。重みっていうのかしら。<br />うん、そうきっといろんな重みよね。<br /><br />で、その主人公が今は、老いてしまって<br />認知症におかされはじめてしまっているっていうことが<br />徐々に発覚していくわけ。<br />残酷よね、これって。<br />だってそうでしょ。<br />もっとも大切なものを、彼女は生きながらにして<br />奪われるわけじゃない？<br />大好きだった人とのほんの少しの思い出よ。<br />でね、そのことを知った老女が涙を流しながらいうわけ。<br />「私が忘れたら、あの人は二度死ぬことになる」って。<br /><br />マスター、これって泣けるでしょ？<br /><br />私なんか、もう本当に鳥肌立っちゃって。<br />これは映画なんだ、フィクションなんだ、嘘っぱちなんだぞって<br />自分に言い聞かせようとするんだけど、<br />だめね。もう本当に心がつかまれちゃってるんだもの。<br />こんなに重い人生があるんだなぁって。<br />生きるとか愛するって<br />本当はすごく重いことなんだなぁって。<br /><br />そういう映画だったんです。<br /><br />ねぇマスター。夜の世界って、<br />露骨な人の浮き沈みを嫌でも見たりすると思わない？<br />人の価値はいつだってその時の羽振りのよさできまってしまうし<br />金に群がる者も、群がられる者も<br />この世界の闇みたいなものを知っているつもりじゃない。<br />ようはそれが商売なんだから、<br />せいぜい自分の足元はすくわれないようにって<br />みんな必死なわけだし。<br /><br />でもね、マスター、<br />あたしね、<br />本当の闇って、<br />そんなちっぽけなものじゃ<br />ないんじゃないかなぁーって<br />そんなふうに思っちゃった。<br />映画見て、<br />感傷的になって、<br />学もないのに馬鹿げたことを言っているって<br />笑ってくれてもいいんだけど、<br />でもそう思っちゃったのよ。<br />本当の闇はきっと<br />いつも私たちの心の中に<br />あるのかもしれないなぁって。<br />言葉にしちゃうと<br />なんだかとっても安っぽい言い方だけど。<br /><br />こんなこと言うのって変かしらね？<br />でもね、なんでそんな風に思うかっていうのだけは<br />聞いてくれる？<br /><br />だってマスター、<br />私ね、<br />自分はこれまで<br />映画の中の老女や、神田の社長さんのように<br />「僕は君の中で二度死ねる」って<br />言ってくれたり、<br />逆に自分が言えるような<br />そんな人に出会えてきたのかなって、<br />そんなことを自分自身に尋ねる勇気なんてないもの。<br /><br />ねぇマスター？<br />あなたはどう思うの？</p>
]]></content:encoded></rss:item><rss:item rdf:about="http://www.creative-platform.com/oneemaster1/2007/5/14/418980020498.html"><rss:title>きのこと毒きのこを見分けるには、勇気を出して食べてみるしかないのでしょうか？</rss:title><rss:link>http://www.creative-platform.com/oneemaster1/2007/5/14/418980020498.html</rss:link><dc:creator>佐藤寛孝</dc:creator><dc:date>2007-05-14T21:24:58Z</dc:date><dc:subject></dc:subject><content:encoded><![CDATA[<p>今回は井戸端会議のお母さん口調で。<br />句点の後に、「あらまぁ～」とか「たくのもなんですよ」と<br />相槌を入れつつ読んでみてください。<br />多少、雰囲気なんかが出ますんで。<br /><br />じゃぁ、奥様どうぞ。<br /><br />あらやだ。奥様だなんて。<br />そんな呼ばれ方、久しくされていないから<br />なんだか照れちゃいますわ。<br /><br />うちの亭主や子供たちなんて、<br />人の顔をみれば<br />やれお腹がすいただの喉が渇いただの、<br />やれそこのリモコンを取ってくれだの、<br />やれ明日もって行く体操着が乾いていないだのばかり。<br />私のことを動く電化製品かなにかとしか<br />思っていないらしいんですよ。<br /><br />こないだなんかもね、<br />中学生になった上の息子の三者面談に行ったんですけど、<br />担任の先生に、佐藤さんのところは共働きでらっしゃいますね、<br />なんて突然言われたんです。<br />先生が、勘違いされているのかなって思ったので、<br />「うちでは子供の教育を考えて、私は勤めには出ていませけど」<br />ってそうお答えしたら、<br />先生が「あれおかしいなぁ」っていいながら、<br />「息子さんの書かれた家族構成では<br />ご両親の職業欄は会社員と家政婦となっていたもので」<br />なんて言うんです。<br />もう顔から火が出るほど恥ずかしい思いをしましわ。<br /><br />でも、これだって自分がおなかを痛めて生んだ<br />子供だから笑ってゆるせますけどね。<br />亭主がそんなことをしたら、<br />私もさすがに怒りますよ。<br /><br />今回は、その夫に関してですけどね、<br />私最近、主人と一緒に<br />古い映画をTVで見ていて、<br />懐かしい記憶をを思いだしてしまったんです。<br />これはもちろん、お互いに初々しいところがあった<br />とっても大昔の話なんですけどね。<br /><br />初めて主人が私をデートに誘ってくれて、<br />二人で映画を見に行った時の話です。<br />えぇもう本当に懐かしい話です。<br /><br />当時はお互いにお金がなかったから、<br />自分のチケットは自分で買ってみたいな、<br />今でいう割り勘デートですよね。<br />それでも楽しくて。<br />二人ともすごくドキドキしながら<br />当時流行っていたフランスの映画を、<br />分かりもしないのに気取って見に行ったんです。<br /><br />で、映画が始まって直ぐのことなんですけど、<br />私、なんだかおなかの調子が<br />悪くなってきてしまったんです。<br />最初はちょっとおかしいなぐらいだったんですけど、<br />前の晩に何か変なものでも食べたかしらって、<br />あれこれと考え出してしまったのがいけなかったのね、<br />余計におなかの具合が気になってしまって。<br />すると不思議なもので、どんどんおなかが痛くなってきちゃうんです。<br />冷や汗なんかも出てきて、こうなると、<br />もう映画どころじゃなくなっちゃいます。<br /><br />本当はね、直ぐにトイレに行きたかったんですけど、<br />でも、ほら、初めてのデートで<br />ずっと大好きだった人が真横にいるわけでしょ。<br />なんだかどうしてもトイレに立つ勇気が湧かないんです。<br /><br />もうひたすら早く映画が終わってくれないかなって、<br />最後まで我慢しようって自分の中で決めちゃって。<br />私、高校時代は陸上部で長距離を走ってましたから、<br />レース中に腹痛に見舞われても完走した経験なんかを<br />無理やり思い出したりして。<br />一生懸命自分を励ますわけです。<br /><br />でもね、入り口で買ったパンフレットを暗がりの中で見てみると、<br />その映画、２時間半近くもかかるってかいてあるんです。<br />最長１０キロしか走ったことのないのに、<br />いきなりフルマラソンの世界記録分を、我慢するのかぁって。<br />もう正直絶望的な気分になってしまってね。<br />そうなると、なんだか、ぜんぜん悲しいシーンでもないはずなに<br />泣きたくなってしまって。<br /><br />そんなこんなをしていたら、<br />隣に座っていた主人、まぁ当時は「大輔さん」なんて、<br />かわいらしく下の名前で呼んでいたんですどね。<br />その彼がいきなり、とっても大きな音をたてて<br />「ブッ」というオナラをしたんです。<br />もう、映画館中に響き渡るような<br />大きな大きな音でね。<br />私、本当にビックリしてしまって。<br /><br />素敵なフランス映画の雰囲気を台無しにされた<br />他のお客さんたちから、<br />くすくすと忍び笑いが聞えてきて。<br />すると彼が、私の耳元で、<br />「すまないけど、慣れないフランス映画なんかを見ていたら<br />おなかの調子が悪くなってしまった。途中だけど、出ませんか？」って。<br /><br />おなかの痛みが限界だった私は、<br />その言葉に、小さくうなずいて、<br />二人ともなんだかニコニコ笑っているかのように<br />映画館を出て行ったんです。<br />彼が私の手を握ったのは<br />その時が初めてだったと思います。<br /><br />で、その後、<br />あれだけ苦しめられた腹痛のほうが<br />どうなったのかなんですけど、<br />実はぜんぜん覚えていないんです。<br />ただ、映画館を出た後、<br />主人が当時バイトをしていた食堂で<br />とってもおいしい中華そばを<br />二人で食べた記憶がありますから、<br />きっと大事には至らなかったんでしょね。<br />ただ不思議だったのは、<br />あの時の主人のオナラが、<br />ちっとも臭ってこなかったことなんです。<br />こんなこと、人様に自慢するような話じゃないんですけどね<br />たくの亭主のオナラのくさいのなんのって。もう。<br /><br />で、話をもどしますけど、<br />実をいいますとね、<br />このお話にはもう少しだけ後日談があるんです。<br /><br />私たち、その後、ちょっとの間<br />離れて暮らす時期があったんです。<br />就職した主人が転勤で東京を離れたもので。<br />その間に、私も会社勤めを経験しました。<br />そこで、私をデートに誘ってくださった先輩がおられたんですね。<br />何べんもお誘いを受けて、<br />私には恋人がいますからと言っても引き下がらないくらい<br />相手も結構真剣なんです。<br />正直、私も主人と中々会えず寂しかったし、<br />その先輩からちやほやされて嬉しかったのでしょうね。<br />一度だけ、その方と会社帰りに<br />映画を見に行くことにしてしまったんです。<br /><br />で、またしても映画です。<br />前回で慣れない外国の映画には懲りてましたから<br />今回は日本映画を見ましょうということになって。<br />当時評判になっていた、作品を選んでいただいて、<br />料金もその方が払ってくださって。<br /><br />でもね、私結局、その映画も途中で出てきてしまったんです。<br />その方のメンツのためにも行っておきますが、<br />先輩は社内での評判どおり<br />とても紳士的な方だったんです。<br />今でも当時の会社に勤められていて<br />結婚もされたとうかがっております。<br /><br />ただね、ちょっとしたことだったんですけどね。<br />映画の途中だったと思います。<br />前列の方に座っていた若い夫婦の連れていたお子さんが、<br />映画に飽きてしまったらしくて、<br />ぐずりだしてしまったんです。<br />ご両親は必死になだめようとされたんですけど、<br />いったん泣き始めた子供は意固地ですからね、<br />どんどんうるさくなってしまって。<br />結局、そのご家族は映画の途中で<br />退席されてしまったんです。<br />そんなことがあったんです。<br /><br />で、その様子を見ていた先輩がなんですけど、<br />始終、苦虫を噛み潰したような顔をされているのを<br />私は見てしまったんですね。<br />たぶん、映画館にいた全ての人が<br />先輩と同じような気分だったでしょうから、<br />彼だけが特別どうってことではないんですけどね。<br />なんだか、それでも嫌だなぁって思ってしまって。<br />そしたら急に、主人の顔と<br />れいのオナラのことを思い出してしまってね。<br />そこで、<br />「ごめんなさい。でもやっぱり帰ります」って、<br />かなり失礼な仕方だったんですけど、<br />先輩をおいて、<br />映画館を出てきてしまったんです。<br /><br />その後直ぐに、主人に求婚されました。<br />もちろん、このことは今の今まで主人は知りません。<br />それでも、何かを感じ取っていたのかもしれませんね。<br />そんな思い出です。<br /><br />それで、先日主人と一緒に見た映画の話になるんですけど。<br />その映画っていうのが、<br />私が隠れて先輩と見に行った作品だったんです。<br />珍しく金曜の夜に早く帰ってきた夫が、<br />これまた珍しく、一緒に見ようと誘うんですね。<br />私は昔のことなんか知らん振りをしながら<br />一緒に見ていたんですけど、<br />誘っておいた当の夫の方がソファーに横になって<br />「ぐーすかぐーすか」大きないびきをたてて<br />寝てしまっているんです。<br /><br />それでも、なんとなく<br />途中で見るのをやめるのもなんだったので、<br />私は一人で映画を見続けていたんです。<br />すると、やがて、<br />あの日、隠れて先輩と見に行った時に<br />男の子がぐずりだしたシーンになったんですね。<br />「あぁここだ」って、<br />年甲斐もなく私はなんかドキドキしちゃったりして。<br /><br />そしたらね。これはものすごい偶然なんでしょうけどね。<br />隣で寝ていた夫がいきなり、<br />大きな音でオナラをしたんです。<br />「ブッ」って。<br /><br />「もう」と言って振り向いた私の前で、<br />ビールのまわった主人は気持ちよさそうに寝ているんです。<br />それからゆっくりと、<br />今度は臭い匂いが追いかけてきました。<br />夕方の空に光った後に<br />遅れてやってくる落雷の音のように<br />強烈なやつがです。<br /><br />本当に馬鹿みたいなんですけどね。<br />その時、あぁ私は、<br />この人のオナラに口説かれてしまったんだなぁって<br />しみじみと思ってしまったんです。</p>
]]></content:encoded></rss:item><rss:item rdf:about="http://www.creative-platform.com/oneemaster1/2007/5/10/665646089464.html"><rss:title>ポカリは誰と飲むのが一番美味いのか？</rss:title><rss:link>http://www.creative-platform.com/oneemaster1/2007/5/10/665646089464.html</rss:link><dc:creator>佐藤寛孝</dc:creator><dc:date>2007-05-10T16:59:35Z</dc:date><dc:subject></dc:subject><content:encoded><![CDATA[<p>今回はなんとなく体育会系の先輩口調で。<br />句点の後に、「はい」といいながら読んでみてください。<br />雰囲気が出ますんで。<br /><br /><br />じゃぁ先輩どうぞ。<br /><br />「おおぁ。<br />今日は雨で外練（習）ができないってことなんで、<br />ちょっと一二年に集まってもらったわけなんだけどぉ。<br />まぁこれから話すことに関しては<br />俺らも上の先輩たちから似たようなことを<br />さんざん言われてきたことだし、<br />これは三年全員の総意でもあるんで<br />その辺のことはお前らにもわかって聞いてもらいたい。<br /><br />俺が今日お前らに言いたいことだけど・・・<br />おい、佐藤、お前にはなんのことだか分かるか？<br /><br />「はい。分かりません・・・」<br /><br />そう、そうなんだよ。<br />佐藤はぜんぜ分かってないんだよ。座れ。<br /><br /><br />えぇ～～お前らの中に、どうやら、<br />他人の世話なんか焼いている前に<br />自分の心配をしろって考えを持っている奴がいるらしい。<br />なんでも、仲間の心配は<br />自分に余裕がある時にするもんだって。<br /><br />自分の責任を果たそう、<br />まずはそこからだぞって気持ちは正しいと思う。<br />エースが走り込みもしないで<br />四番バッターのトスバッティングに付き合ってたら、<br />うちのチームは甲子園どころの話じゃなくなっちまう。<br />でもだ。自分は良い球だけを投げていればいいんだって<br />そんなふうに思ってるピッチャーのいるチームが敵だったらどうだ？<br />そんなチームが本当に怖いか？<br />まして、そんなチームでお前らは野球がしたいか？<br /><br />中国かどっかの偉い人が自分の弟子に向かって、<br />こんなことを言ってた。<br />人はどれだけのものを手に入れてきたかじゃない。<br />他人にどれだけのものを与えてきたかだぞって。<br /><br />お前らの中に、練習の後に、缶ジュースを仲間と<br />回し飲みしたことがある奴がいるだろう。<br />俺はこの言葉を知った時、<br />中国人にとっても、<br />練習の後<br />喉がからからの時に<br />チームメイトと分け合って飲んだポカリは<br />一人で思う存分飲んだ時なんかよりもうまいんだなぁ、<br />そう知っていたく感動した。<br /><br />自分に余裕が出てきたから<br />仲間のことを考えるっていうのは、<br />ビル・ゲイツがユニセフに寄付するみたいなもんだ。<br />ウィンドーズで世界を制覇した男の金だったら、<br />東京ドーム何個分ものポカリが買えるだろう。<br />でも、ビルがそのポカリを貧しい子供たちと<br />回し飲みすることはないと俺は思う。<br />そんなこと、清原が標準語を喋るぐらい想像できない。<br /><br />むろん、ビルのような人が、<br />他人を思いやる、その行為自体は素晴らしいことだ。<br />東京ドームいっぱいのポカリで<br />どれだけの子供たちの喉を潤せるか考えてみろ。<br />ただ、だからといって、<br />他人のことを心配するのは<br />余裕のある奴らだけの義務や特権だと考えるのは<br />どうだろうと俺は思う。<br /><br />俺の中学は分校だったから、入学した時、<br />野球部員はたったの８人しかいなかった。<br />少数部員だから、一人でも練習を休むと<br />キャッチボールのペア組みで<br />どうしても一人余ってしまうんだ。<br />一人でするキャッチボールは寂しいぞぉ。<br />だから、誰もそんな気持ちを仲間に味あわせたくないから<br />ちょっとくらいの風邪や怪我じゃ練習を休まなかった。<br /><br />しかも部費は部員数に対して支払われるわけで、<br />道具やユニフォームを維持するのも楽じゃなかった。<br />部室の電球が切れると<br />音楽準備室の電球を拝借してきたり、<br />練習の後は<br />シャワーの代わりに夜中のプールに飛び込んだりもした。<br /><br />試合になれば、サッカー部やバスケ部の奴に<br />頭を下げて応援を頼んでまわった。<br />試合が始まってライトの奴だけがロン毛なのに、<br />後はみんな坊主ってことで、<br />さんざん相手チームに馬鹿にされた。<br /><br />それでも、野球部を続けることに疑問なんか持たなかったし、<br />とにかく野球が楽しくてしかたなかった。<br /><br />今こうやって、名門校のキャプテンなんかに選ばれて、<br />百人以上の部員と毎日ポジション争いなんかをしていると、<br />あの頃の純粋の気持ちとかなんて、簡単に忘れそうになる。<br />いつのまにか、後輩が差し出してくれるポカリを<br />半分くらいだけ飲んで捨てちまったりしているわけだ。<br /><br />そんな時、ふと、思ったりするんだ。<br />ポカリってこんな味だったかなぁって。」</p>
]]></content:encoded></rss:item></rdf:RDF>