真っ赤な郵便ポストを探せ!
金曜日, 4月 4, 2008 at 11:38午後 私はね、マスター、
最近こんなふうに思うわけ。
経験って、自分が本当に手に入れたいと願っていたものを
手に入れられなかった時に手にするものなんだなぁって。
マスター、私はもうつくづくそう思うわけ。
ねぇマスター。聞いてる?
何で突然こんな話をするかっていうとね、
私こないだ久々に夢を見たの。
夢を見たぐらいでって思われちゃうかもしれないけど、
私、夜の仕事を始めてからとんと夢なんか見なくなっちゃったの。
お店閉めて、もろもろの片づけをして
マンションに帰れるのが朝の四時か五時でしょ。
こうやって時々マスターの顔を見て
話を聞いてもらってからなんてなると
家の近くで登校途中の小学生の集団に遭遇するわ。
だからね、夢を見なくなったことに関してもどこかで思ってたのね。
あぁ、夢って夜の暗い世界で見るもんなんだなぁ~って。
ところが、先日見た夢はちゃんとお昼にやってきちゃったのよ。
それもあってちょっと驚いちゃって。
夢の中でも、目覚めてからもね。
その夢がどういう始まりかたで、
どういう終わりかたをしたかはおぼろげなんだけど。
夢の中でね、
私が郵便受けに郵便を取りに行くのね。
フンフンフンって鼻歌まじりで。
きっとなにかいいことがあったのね。
そしたら、赤くて小さな郵便受けがあって
そのの中には私がこれまでに書いた手紙が全部
出したはずの相手に届かないで戻ってきてしまって
今にも溢れんばかりってことになっているのよ。
小学校の頃に書いて、
結局出せずじまいだったラブレターとかまで
どういうわけかもどってきちゃってるのよ。
出してないのに。
私のこころがね、そこで止まる音がするのね。
そのせつない音がアラームになって私は目を覚ましたの。
太陽がカーテンとカーテンの隙間から私を狙っていたわ。
ねぇマスター。
あの戻ってきてしまった手紙たちって
私の夢の残骸だった気がしてしかたがないのよね。
叶わなかった夢とか希望とか
報われなかった努力とか涙とか。
それが私の心の郵便受けにいっぱいになってるのね。
「世間じゃそれを経験って呼ぶ・・・ですか?お客さん?」
クラブのママ風情がちょっと感傷的になりすぎかしら?
「お客さん。こんな話をしってますか?
お客さんのお話をうかがっていたら、
懐かしい、夜の街に伝わる伝説の話を思い出してしまいました。
そいつが本当かどうかは誰も知りません。
所詮、夜にはえるネオンの灯に魅せられて集まる連中にとっては
真実かどうかなんていうことは大した意味も持ちはしませんからね。
聞いた話じゃ、この街のどこかには、
古臭い寸胴形の真っ赤な郵便ポストが
いまだにたった一つだけ存在しているらしいのです。
そのポストには、誰が彫ったのか、
「シャー専用」と刻まれているらしいんですね。
えぇ、あの伝説の赤い彗星、シャアです。
でね、なんでも噂じゃぁ、ある勇気のある男が
試しにそのシャア専用ポストに手紙を投函したそうなんです。
まったく怖いもの知らずの奴がいたもんですよ。シャー専用ですよ!
どうなったかというと、
その男の出した手紙がね、
なんでも、
普段の三倍のスピードで相手に届いたらしいんです。
お客さん、怖いでしょう?
それでね、夜の世界じゃ畏敬の念を込めて
その赤いポストをシャア専用ポストって呼ぶようになったらしんです。」
佐藤寛孝 |
Post a Comment | 