土曜日
2022008

矢野顕子×これから

矢野顕子が現在もっとも音楽に没頭できる場所、
それがプライベートスタジオ・パンプキン。
マンハッタンの喧騒を離れた小さな田舎町の
優しさの香る「秘密基地」で、
デビュー30周年を迎えたアッコちゃんの世界を紡ぎました。
こっちからの続きです。



矢野顕子×これから

インタビューを受ければ大概は過去の話。
「30年もやっていると過去のことを
あーじゃないこーじゃないって質問ばかり。
本当に大切なのは今とこれからなのにね」

痛い所を突かれたからというわけではないが、
マンハッタンのど真ん中で再開発の嵐に遭いながらも
暖簾をしっかり守る寿司屋の女主人、矢野顕子が、
無論「保存、保存」と守りに入っているわけがない。
その辺は勘違いないようにってことで。

「ライブでもね、もっと色々なアイデアを試してみたいの」。

その言葉にこちらが思わず
「いやいや出前コンサートに託児サービスと、
誰もがやれるわけじゃないことを
涼しい顔してやってこられたじゃないですか」と口走ったら、
つまんない事言う人ねって顔をされてから、
「たとえばお客さんの年齢を限定するとか、
妻に先立たれた夫たちだけのコンサートなんてどうかしら。
寿司屋としては腕の見せ所じゃない?」と笑っていた。

その笑顔がなんだか森の中の秘密基地で
仲間に悪戯の構想を語る少年のようなので、
ついついこちらも悪乗りしまして
「『矢野顕子が苦手な人限定コンサート』ってのはどうですか」
と言ってみたら「いいわねそれ」と
長いインタビューで一番の笑顔で喜んでいた。

「どうせなら御代は最後に頂くことにして、
悔しそうに『矢野顕子の音楽、美味しかったです』って言わせちゃうの」
と言って笑った顔が忘れられない。

(敬称略)

おわり