柳本明子 「ドメスティック・ストーリー 家の中から」
火曜日, 8月 7, 2007 at 10:14午後
柳本明子「ドメスティック・ストーリー 家の中から」@ Yuka Sasahara Gallery
2007年6月30日(土)~2007年8月4日(土)
柳本明子(1979-)は、透明なビニールシートに毛糸で刺繍した作品を中心に制作しています。柳本は生活の一部に存在するアートとして「ドメスティックアート」を提案し、家庭や生まれ育った環境における何気ない日常のなかの、ごく当たり前のこととして意識されないものごとに注目してきました。材料や技法も家庭を連想させる刺繍をつかい、誰もがもつ原点、社会のはじまりとしての家庭に潜む核心を探ります。今回の展覧会では、よく知っていたはずのところで全く予想していなかったことが起こる、親密さの中にあらわれた異質な距離感をテーマにした作品、およそ6点を展示します。柳本自身が体験した、ウソみたいな現実が一番身近なところでおこるというフィクションのようなノンフィクションの一場面は、透明なビニールシートに刺繍されることにより、作品を通して見える向こう側の日常をも作品へと取り込みながら、更なる物語を形成していきます。
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数年前の記憶がぽっかり抜けていたり、大切な人の名前をど忘れしてしまったり、昨日何を食べたのかどうしても思い出せなかったり、なんてことは年をとるにつれてよくあるものだ。でも、そういう時でも、たいていの場合は、前に撮った写真を見たり誰かに「ほら、○○さんだよ!」って横から言ってもらえたりすると「あっそれそれ、そうだった!」って、すぐによみがえってくることが多い。
でも、いくら見つめても見つめても全く見覚えがなく、けどどこか懐かしげ、しかし絶対に答えは誰にも教えてもらえない、それはそれは歯痒い謎の記憶、、、私にとって、柳本明子の作品はそんな絶望と空虚感に満ちている。枠のなかにはめられた写真の中に立ち尽くす人々は全て、ポップな色使いで彩られた刺繍が囲む透明なビニールシートでできていて、その向こうにあるのはなんでもないただの空虚。反対側から眺めても、それはもちろん変わらない。どちらから眺めてもまったくすきも手抜きもないほどの完成度、そして存在感のなさがかもし出す圧倒的な存在感を誇るこのトリッキーな作品に、私は無性に引き付けられるのだ。
ユーモラスな中にこめられたシュールさがきらりと輝き、そしてちくりと針を刺す。そんな彼女の作品をこれからも追い続けていきたいと思う。
柳本明子さんの作品と活動について詳しくはこちらをご覧下さい。
濱地 絵里 |
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