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<!--Generated by Squarespace Site Server v5.11.81 (http://www.squarespace.com/) on Sat, 18 Feb 2012 02:32:28 GMT--><rss xmlns:content="http://purl.org/rss/1.0/modules/content/" xmlns:wfw="http://wellformedweb.org/CommentAPI/" xmlns:itunes="http://www.itunes.com/dtds/podcast-1.0.dtd" xmlns:dc="http://purl.org/dc/elements/1.1/" version="2.0"><channel><title>第七章「南の国のシャベルたち」</title><link>http://www.creative-platform.com/amigos/</link><description></description><lastBuildDate>Tue, 11 Mar 2008 19:32:06 +0000</lastBuildDate><copyright></copyright><language>ja-JP</language><generator>Squarespace Site Server v5.11.81 (http://www.squarespace.com/)</generator><item><title>第七章「南の国のシャベルたち」</title><dc:creator>佐藤寛孝</dc:creator><pubDate>Tue, 04 Mar 2008 16:09:54 +0000</pubDate><link>http://www.creative-platform.com/amigos/2008/3/4/852653683457.html</link><guid isPermaLink="false">124297:2036085:1636816</guid><description><![CDATA[<p>シャベルを手に歩道の雪をかいて回りながら、<br />博打の大まかな段取りのようなものを学ぶ一年目の冬が過ぎ、<br />やがて次の冬がやって来ると、<br />キャリーは僕に除雪トラックの運転をさせてやろうと言い始めた。<br /><br />「まぁー君も、去年は一年間シャベルとしてがんばってくれたから<br />今年はトラックの運転をさせてやろうと思う。<br />どうだ嬉しいだろう？」<br /><br />リクライニング機能付きの回転椅子に座り、<br />くるくると回りながら話すこの男は、<br />バカとはまがりなりにも「エグゼクティブ」の副社長であり、<br />僕の上司にあたる。<br />それでも、ここまではっきりと上からの目線で言われると、<br />彼の親友でもある僕としては少し癇に障らないこともなかった。<br /><br />だがそこは僕も、<br />「はぁはぁ、お気遣い感謝いたします」的なことを<br />述べることしておいた。<br />せっかく機嫌の良いキャリーにたてついて、<br />寒い冬の間歩道の雪をシャベルで永遠にかかされるよりも、<br />暖房の効いたトラックの中で<br />ハンドルを握っていたほうが得だと計算高く考えたからだ。<br /><br />僕はいつの間にか取材目的でもぐりこんだ彼らの世界で、<br />心地よい居場所のようなものを見つけ始めていたのかもしれない。<br /><br />トラックでの除雪はチームワークで行なわれる。<br />運転手の相棒として歩道などの<br />トラックではどうしても狭くて入っていけない箇所の<br />雪をシャベルでかいたり、<br />荷台から塩を撒いたりする役目をする<br />「シャベル」と呼ばれる人間が助手席に乗りこむのだ。<br /><br />肉体的にはシャベルのほうがきつい仕事をすることになるが、<br />チームの責任者として細かなことまで気にかけながら<br />仕事をする運転手もそうそう楽ではない。<br />何か問題が起きれば、<br />責任はドライバーが取ることにもなるのだ。<br />むろんその分稼ぎはドライバーのほうが圧倒的に良いのだが。<br /><br />しかし、前の年まではシャベルとして助手席に乗っていた僕が、<br />翌年にはトラックのハンドルを握っているというのは<br />いささか不思議な気がしないでもなかった。<br /><br />「大出世だな、小僧」<br />ブラッドがニヒヒと笑いながらさっそく僕に声をかけてきた。<br /><br />「そうですね&hellip;&hellip;」<br />僕は中途半端な答えしかできなかった。<br /><br />「なんだ、くそ寒い中を雪かきさせられることから解放されたのに<br />あまり嬉しくなさそうじゃないか」<br /><br />ブラッドが少し怪訝そうに僕を見ているのがわかった。<br /><br />「なんだかちょっと悪い気もして」<br /><br />いったい誰に対して悪い気がするのかなどと、<br />やぼなことを彼は訊いてはこなかった。<br /><br />ブラッドの言うように、これはこれで確かに大出世なのだろうが、<br />それとて別に僕が去年一年間、<br />一生懸命仕事をしてきたからだけというわけではなかった。<br />そのことをブラッドも僕も十分知っていたのだ。<br /><br />「エグゼクティブ」ではシャベルとドライバーは<br />まったく別種の仕事として人を雇うことになっている。<br />つまり、どんなによく働くシャベルでも<br />出世をしてドライバーに変わるということは通常ありえないのだ。<br /><br />要は、僕がキャリーやフランクの知り合いだったから<br />ドライバーになれたのである。<br />そのことを十分わかっていたからこそ、<br />僕は今年も冬空のもとシャベルで雪をかいて回る<br />連中が気の毒に思えたのだ。<br />彼らのことを考えれば素直に喜んじゃいけない気もしていた。<br /><br />フランクが雇い入れるシャベルたちの多くは<br />中南米からアメリカへとやって来た新移民たちだ。<br />大抵はニューヨークの経済ピラミッドの<br />最下層に属している連中でもある。<br />誰も彼も貧しいということの本当の意味を知っているという<br />そんな顔をしているのが印象的だった。<br />しかし、誰も貧しさからくる<br />ある種の悲壮感のようなものを抱いてはいなかった。<br /><br />一年目、僕はそんな彼らと一緒に雪が降りつもり、<br />やがて氷に変わるほど寒い外で、<br />汗が体から立ち上る湯気になるほど必死に働いた。<br />彼らの多くは僕が今まで出会ったどんな労働者たちよりも<br />真面目で明るい連中だった。<br />中南米の男たちというのは一般的に陽気だと聞いていたが、<br />きつい労働の間でも笑顔が耐えない彼らは<br />一緒に汗を流す相手としては最高だった。<br /><br />そしてまた、体を動かして働くということに<br />あくまで真摯に取り組んでいる彼らを見ることで、<br />僕は自分たちが行なっている仕事が<br />体力さえあれば誰にでもこなせる<br />単純な肉体労以上のことであるのでは、とすら思えた。<br /><br />一生懸命という言葉は安易に使われすぎていて<br />あまり好きではないのだが、<br />でも彼らには一生懸命生きているという表現が似合った。<br />むろん、誰よりもまず自分に厳しいフランク親分が、<br />たとえ一冬だけの関係になったとしても、<br />陽気なシャベルたちの社会的立場の弱さに<br />つけこむということなどはありえないはずだった。<br />そんなことをしなくても、<br />彼は十分に成功できる器の男だった。<br /><br />フランクはシャベルたちに対して、<br />ニューヨーク州が定めた最低労働者賃金を<br />四ドル以上も上回る時給を支払っている。<br />英語もあまり上手に喋れない彼らにしてみれば、<br />それは破格の待遇だろう。<br /><br />それでもドライバーに指名された僕は、<br />そんな彼らに対して似合わない罪悪感みたいなものを抱いたのだ。<br />そう感じることすら<br />傲慢で勘違いした行為かもしれないとも思いながら。<br /><br />「大出世か&hellip;&hellip;」<br /><br />もう一度呟きながら僕はキャリーの部屋へと戻っていった。<br /><br />一般的に、ドライバーにはトラックや重機などの<br />運転経験のある者だけが雇われる。<br />冬になると、普段は長距離トラックの運転手や<br />消防隊員として消防車やはしご車を運転している連中が<br />フランクのもとに集まってくるのだ。<br /><br />もちろん僕にはトラックの運転経験などはなかった。<br />さらに白状すれば、<br />十九歳の終わりで渡米してしまっていたので、<br />日本での自動車の運転歴も浅く、<br />だいたいアメリカで運転免許を取っていたのも<br />たんに身分証明書としてパスポートの代わりに<br />普段持ち歩けるものが欲しかったからであった。<br /><br />そんな僕が巨大な除雪シャベルを前方にとりつけ、<br />荷台にはこぼれんばかりの塩を積んだトラックを、<br />雪のために視界が極端に悪く<br />非常に滑りやすい悪路の中で<br />夜も昼も関係なく運転することになったのだ。<br />成り行きとはいえ、今振り返っても非常に恐ろしいことこのうえない。<br /><br />「それもこれも全ては俺の親切なはからいによるのだぞ」<br /><br />キャリーは少しだけ得意な気分になって、<br />僕の想いとはかなりずれたことを言っていた。<br /><br />「トラックを壊したら、お前が責任取ることになるけどな」<br /><br />なんだかんだいっても優しい友人に、<br />僕は呟くように言い残し、<br />ベースからもっとも近いミドルビレッジと呼ばれる<br />工業地区のルートを手にして、<br />路上に停められたトラックへと向かった。<br /><br />こうなったらどうにでもなれといった、<br />すこしだけ投げやりな僕の背中に向かって、<br />「今夜のシャベルはデネンだからな」とキャリーが叫んでいた。<br /><br /><br /><a href="http://www.creative-platform.com/snowmoney/">（つづく）</a></p>
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